ワンナイト・イン・モンコック

ワンナイト・イン・モンコック

原題 旺角黑夜

製作 2004年

めぐちゃんの満足度 ★★★☆☆

 

爾冬陞(デレク・イー)監督・脚本によるクライムサスペンス作品です。

 

ティム(孫力民)の組とガウ(方平)の組は香港の二大勢力で友好関係でしたが、ティムの息子のタイガー(彭懷安)とガウの組の構成員であるファイ(李燦森)がひょんなことから小競り合いとなり、ファイと仲間が乗った車はタイガーが運転する車に突っ込み、タイガーは死亡します。
タイガーの車に同乗していたホステスのスー(馮頌晴)は重体となって病院へ搬送されます。

 

ガウは負傷したファイを連れてティムに謝罪をしますが、息子を失ったティムは報復するため、部下にファイの殺害を命じます。
恐れをなしたガウは現場から逃走し、ファイはティムの部下に殺されます。

 

二大マフィアの抗争が勃発し、警察が動き出します。
ミウ方中信)、クワイ(錢嘉樂)、ワイ(王合喜)、キン(林子博)、キョン(吳瑞庭)、フォン(何慕詩)の捜査チームに新人のバン(梁俊一)が加わり、情報屋(車保羅)から事件の経緯を聞いたミウたちは捜査を開始します。

 

ティムは逃げたガウを殺害するため、電話屋のリウ(林雪)に殺し屋を手配させます。
ティムの依頼を受けたリウは本土の仲間に連絡をすると、リウの仲間は青年のフー(吳彥祖)を派遣します。

 

フーは香港に到着し、旺角のホテルへ行きます。
リウがフーに送った箱の中には報酬の前金と携帯電話、暗殺に使用する銃が入っていました。

 

情報屋はリウがティムの依頼を請け負ったことをミウクワイに伝えます。
捜査チームはリウの店に押し入って捜索を行い、リウとリウの妻(徐美娜)を連行します。
フーが旺角のホテルに潜伏していることをリウから聞き出したミウたちはホテルへ向かいますが、フーは外出していたため鉢合わせすることはありませんでした。

 

フーは別のホテルへ移動すると、チンピラのワー(陳望華)が出稼ぎで香港へ来ていた娼婦のタンタン(張栢芝)に暴行する現場を目撃し、フーはタンタンを助けます。
ワーに眼鏡を壊されたフーは激高してワーを痛めつけると、怖気づいたワーは金を置いて去って行きます。
ワーの仕返しを恐れたタンタンはフーを連れてホテルから逃げ出します。

 

タンタンはフーと同郷であることを知ると親近感を感じ、フーが大金を持っていることを確認すると舞い上がります。
フーが人探しをしていることを知ったタンタンは意欲的にフーに協力します。

 

フーはホステスのスーを捜していますが、フーはスーが香港でホステスをしていることを知りません。
フーはスーの祖母(侯煥玲)がいる廟街へ行くため、タンタンに道案内してもらいます。

 

警察に捕まったリウは保身のためにフーを裏切り、警察に突き出そうと考えます。
ミウはフーをおびき寄せるためにリウを釈放します。

 

タンタンが店で鞄を盗まれたことに気づくと、フーは自分の鞄をタンタンに預けて置き引き犯を追います。
フーはタンタンの鞄を取り戻しますが、置き引き犯に殴られて負傷します。
一方、フーの鞄の中から拳銃を発見したタンタンはフーがただの青年ではないことを知って怯み、これ以上フーに関わらないようにしますが、フーは引き続きタンタンに道案内を頼みます。

 

町ではタイガーとファイの事件絡みの抗争が起こり、ミウは事態を収拾するために「ワンナイト・イン・モンコック」作戦を開始し、ティムとガウ、そして殺し屋のフーを捕まえるために本格的に動き出します。

 

フーたちがクラブでスーを捜していると、捜査チームがクラブに現れます。
捜査チームは逃げるフーとタンタンを追いますが、捕まえることはできませんでした。

 

新人のバンは銃の腕が立ちますが、先輩であるクワイは人を撃つ前に一度思いとどまったほうがいいと忠告します。

 

フーはリウと電話で連絡を取りますが、リウの裏切りを知ったフーはリウを殺そうとします。
タンタンに制止されるとフーはリウを見逃し、フーたちが去った後にリウは警察に逮捕されます。

 

フーとタンタンは出会ったホテルへ戻ってひと休みします。

 

再び情報屋がミウたちの前に現れ、ホテルで男が潜伏しているという情報を提供します。
捜査チームは言われた通りホテルへ向かい、用心して部屋の扉を開けますが、人影に動揺したバンは部屋の中にいた麻薬売人の男(尹相林)を射殺します。
バンの行為を非難するワイですが、ミウは売人の死を正当防衛として偽装することにします。
ミウはかつて犯人を射殺した経験があり、警察官としての責務よりも仲間の立場や命を重視するようになっていました。
売人の男が隠していた麻薬を発見した捜査チームは上層部から称賛されます。

 

ホテルで休んでいたタンタンが生理痛で苦しみ始め、フーに鎮痛剤を買ってきてほしいと頼みます。
さらにタンタンは役目を終えた銃を捨ててきてほしいと告げます。
フーは路上のゴミ箱に銃を捨て、コンビニで鎮痛剤を購入します。
コンビニで販売していた新聞にスーの記事が掲載されているのを目にしたフーはホテルへ戻ってタンタンに新聞を見せると、スーが重体であることを知ります。

 

しかしフーを恨んでいるワーが仲間を連れてホテルに現れ、フーを暴行します。
ワーはタンタンに性的暴行を加えてホテルから立ち去ると、激高したフーは制止するタンタンを振り切ってワーたちの後を追います。
フーは路上のゴミ箱に捨てた銃を取り出してワーに銃口を向けると、捜査がひと段落して露店で食事をしていた捜査チームは異変に気づきます。
フーとワーがもみ合いになるとバンが駆け寄ってフーに銃口を向けますが、フーはバンの喉元に銃弾を撃ち込み、その場から逃走します。

 

ミウとワイは逃走するフーを追い、フーがワイに銃口を向けたためミウはフーを射殺します。
フーに撃たれたバンは死亡し、重体だったスーは病院で死亡します。

 

タンタンは二度と香港の地を訪れないことを誓って本土へ帰郷するのでした。

 

「第24回香港電影金像奨の最優秀監督賞・最優秀脚本賞
「第10回香港金紫荊奨の最優秀監督賞」
「第41回金馬奨の最優秀監督賞ノミネート」
その他にも様々な賞を受賞・ノミネートしている評価の高い作品なのですが、私は正直そこまでハマれなかった(._.)

 

ティム親分は自分の息子をガウの組のチンピラに殺されてガウに報復しようとするのですが、雇う殺し屋が人を殺したことのない青年というのが引っかかる。
確実に相手を仕留めたいなら大枚をはたいてもベテランの殺し屋に依頼しそうなものですが。
フーを手配したのは仲介人のリウなのでティムが直接依頼したわけではないんですけどね。

 

吳彥祖(ダニエル・ウー)演じるフーが腕の立つ殺し屋に見えない(^^;)
もっと強烈に腕が立つという描写があれば納得できるのですが、そういう描写が少ないので普通の青年にしか見えないんですよね。
田舎の素朴さと殺し屋の非情さが混在するキャラクターって面白い設定だと思うのでもう少し表立って表現できていれば良かったかなって思います。

 

フーには殺しの依頼の他に恋人のスーを捜す目的もあって香港にやって来るのですが、主要な目的が2つあると話がブレるなぁ。
ガウを殺しに行くという目的で話が進むのですが、途中からスーを捜す目的も入ってくるので少しモヤモヤする。
人を殺すって非常に神経やエネルギーを使う行為だと思うので、人探しと並行して片手間でできることではないと思うんですよね。

 

方中信(アレックス・フォン)演じるミウ警察官が非常に好演で、主役のダニエル・ウーを食う勢い(;^_^A
警察内の人物描写やドラマ演出部分はかなり面白くて、むしろ警察視点で描いてもいいぐらいかもって思いました。

 

あとタンタンたちはワーに狙われているのに最初のホテルに戻るなんて危ないでしょ!!
ワーって単なるチンピラかと思っていたら二大抗争マフィアのティムとガウより目立っているという(;'∀')

 

バンがコンビニでフーらしき人物を見た時にクワイは「気のせいだ」って言っていたけど、警察だったらわずかな手がかりでも調べるべきなのでは(^^;)

 

と、色々と気になるところもあるのですが、混沌とした旺角の街中の映像や緊張感のある演出は楽しめますし、演者さんの演技も素晴らしいです。
前述したようにアレックス・フォン演じるミウ警察官は引き込まれるキャラクターですし、ちょっとしたたかだけど明るくて気のいい娼婦のタンタンを演じたセシリア・チャンも好演でした。
ちょっと胡散臭い電話屋役の林雪はもう安心して観れます(笑)
マフィアと警察の板挟みにあって結果的に同郷のフーを裏切ることになってちょっと気の毒だったなぁ( ;∀;)
リウの妻役の徐美娜は少林サッカーの饅頭屋のおばちゃん役の方ですね(・∀・)

 

チン・ガーロ演じるクワイが「坐低、飲杯茶、食個包!」と林雪演じるリウに言っているのがウケた(笑)
日本語にすると「座って茶でも飲んでパオズでも食おうや。」という意味です。
香港映画に精通している方ならご存じかと思いますが、このセリフはチャウ・シンチーがテレビドラマのシーンで使って話題となり、シンチーが出演するCMでも使われました。
細かい話をすると、劇中でクワイは「飲杯茶(ヤムプイチャー)」と言っていましたが、シンチーがドラマやCMで発音していたのは「飲啖茶(ヤムダームチャー)」で、量詞(助数詞)が微妙に異なります。

 

日本ではカットされているシーンが結構あるのですが、未公開シーンを観てみるとキャラクターの心情を表すシーンがあったので、カットするのがもったいないと思いました。
何でカットしたんだろう?

 

ダニエル・ウーセシリア・チャン普通話のセリフをあんなにスラスラ話せるなんて凄い(・o・)
ネイティブの方からすると2人の普通話は多少違和感があるそうなのですが、私は普通話が分からないので違和感があると言われても全く気づかないです(^▽^;)
きっと微妙なイントネーションの違いとかあるんだろうなぁ。

 

なぜかホテルに山田まりやのポスターが貼ってあったり、ゲームショップのシーンではプレステ2が登場したり、ちょいちょい日本の物が登場したりします。
プレステ2って日本での発売は2000年ですが、海外だと少し遅れて販売しているんですよね。
劇中でタンタンが「ゲームボーイある?」って言っていたけど、ゲームボーイはもっと古いよ(笑)

 

フーがコンビニで鎮痛薬を購入するシーンがあるんですけど、日本だとコンビニで市販薬を買う習慣ってあんまりないですよね。
法律が改正してから日本でもコンビニで市販薬が購入できるようになっていますが、置いてあったとしても種類が少ないですよね。

 

タンタンが「香港はなぜ"香"港なのか?」と言っているシーンが印象的でしたが、かつて香港では線香を作るために香木を栽培していて、港で香木の積み下ろしが行われていたことから「香港」と呼ばれるようになったそうです。(諸説あるそうですが)