デッドポイント 黑社會捜査線

デッドポイント 黑社會捜査線

原題 非常突然

製作 1998年

めぐちゃんの満足度 ★★★★★

 

游達志(パトリック・ヤウ)監督のノワール作品です。
監督はパトリック・ヤウですが、ジョニー・トー色の強い作品となっています。

 

チャン(陳捷文)、チョン(張榮祥)、イー(易天雄)は強盗・強姦・銃器所持などの罪を犯している凶悪犯たちです。
3人はマンディ(蒙嘉慧)が働いている喫茶店にやって来ます。

 

別の犯行グループの3人が宝石店に押し入ります。
すぐに警察が駆けつけ、結局3人は何も奪えず逃走します。
2人は逃げ切りますが、仲間のリン(林雪)はマンションに逃げ込みます。

 

チャンは仲間のチェン(鄭祖)に電話し、警察が向かっていると伝えます。
リンが逃げ込んだマンションはチャンたちが強姦に押し入った場所だったのです。

 

チャンの警告を聞いて飛び起きたチェンは所持していた自動小銃を構え待機します。
逃げたリンを追いかけて来た警察は部屋を一軒一軒訪ね、チェンの部屋にもやって来ます。
チェンは女性を殺害し、ランチャーで床に穴を開けて逃走します。
必死で逃げるチェンですが警察に捕まります。
チェンの仲間の3人がやって来て警察と銃撃戦になり、負傷したチェンを救出して逃走します。

 

OCTB(組織犯罪課)チームのケン(任達華)、ベン(許紹雄)、ジミー(黃浩然)、メイシー(黃卓菱)が到着し、現場を目撃していたマンディや従業員たちから事情聴取を行います。
犯行現場のマンションで捜査をしていると、部屋に大量の銃器があったことから宝石強盗の一味とは別のグループだとケンは睨みます。

 

現場にいた警察官から話を聞くと、すぐに出口を封鎖したと証言したため、宝石強盗はまだマンション内に潜伏していると推測します。
マンションの住人たちから事情聴取を行っていると、ケンたちの同僚のサム(劉青雲)がやって来ます。
サムはエレベーターの上に隠れていたリンを見つけ、リンはあっけなく御用となります。

 

凶悪犯グループの1人は重体なので病院を訪れているだろうと推測するサム。
近くの診療所を捜索しているとサムの予想は的中し、チャンたちが姿を現します。
チャンとケンの目が合った瞬間にイーがケンに向けて発砲し、銃声に気づいたベンたちが駆けつけます。
ケンは防弾チョッキを着ていたので無事でした。
ジミーは防弾チョッキを着ていましたが、首を撃たれ重傷を負います。
チャンたちはタクシーに乗って逃走します。

 

ジミーはすぐに病院へ搬送され、何とか一命を取り留めます。
凶悪犯グループの1人であるチェンは診療所で死亡が確認されます。

 

マンディは銃撃戦のことを危惧していますが、サムは心配無いと言います。
マンディがケンに好意を抱いていることを知っているサムは、ケンとマンディをくっつけようとしていますが、恋のキューピットのサムの表情は複雑です。
なぜならサムもマンディが好きなのです。

 

ケンたちは宝石強盗が潜伏していたと思われるアジトを見つけ、捜査します。
調べていくうちに宝石強盗の素性が明らかになって来ます。
逃走中の2人の宝石強盗は兄弟であることが分かり、大きな犯罪歴はありません。

 

現場に記事の一部が切り抜かれた新聞が残されており、宝石店の防犯システムについての記事でした。
再び同じ店が狙われるかもしれないと警戒します。

 

西九龍の警察車両が襲撃され、武器が奪われます。
ベンたちは民家を借りて宝石店を監視します。
しかし宝石店には動きがないので他の捜査員と交代し、いったん撤収します。

 

チャンたちは更に犯行を重ね、母親を暴行し、母子を殺害します。

 

犯行現場のすぐ近くに馬券売り場があり、売上金の輸送車が襲われる可能性があるとオーナーに告げるケンたち。
ケンの推測通りチャンたちが車に乗って現れ、慎重に追跡を開始します。

 

サムは追跡の前にマンディのマンションに警察官を向かわせます。
マンディのマンションは馬券売り場の近くなので、万が一事件に巻き込まれることを懸念しています。

 

チャンたちは警察に気づき、カーチェイスを繰り広げながら銃撃戦が始まります。
OCTBチームは冷静に対処し、チャンたちを射殺します。

 

死亡したチャンたちが乗っていた車の車内からキーケースを見つけるサム。
それはマンディが持っていたキーケースのデザインでした。
血の気が引いたサムは急いでマンディのマンションへ向かいます。

 

ケンたちも駆けつけ、鍵を合わせますがどれも鍵は合いません。
ドアを蹴破ろうとするとメイシーがマンディを連れて来ます。
キーケースはマンディの物ではなく、マンディは家を留守にしていただけでした。

 

事件は解決し、メンバーで飲みに行くことにします。
サムはケンにマンディを譲ろうと思っていましたが、自分の気持ちに正直になることに決め、マンディに想いを伝えることにします。

 

ケンたちが店に到着すると近くに逃走中の2人の宝石強盗を目撃し、追跡します。
サムが車を止めるように警告すると、宝石強盗はサムに発砲。
ベン、メイシー、ケン、次々とメンバーが撃たれます。
ケンたちは撃たれながらも力を振り絞り、2人の宝石強盗を射殺します。

 

OCTBチームは全員死亡します。
勤務外だったこともあり、防弾チョッキを着ていなかったこと、大きな犯罪歴が無い強盗だと思って警戒を怠ったのが命取りでした。
マンディは勤務中にテレビのニュースでケンたちが殉職したことを知るのでした。

 

うわ~、なんちゅうラスト…鳥肌立ったわ…。
皮肉にも入院したジミーだけが生き残ったわけか…ひぇ~。

 

最後のシーンでテレビのニュースでケンたちの遺体の映像が流れていたけど、近年の日本だと絶対遺体の映像は流さないですよね。
海外は流れることもあるようで、紛争地の映像とかね。

 

サムがマンディのキーケースを見つけてマンションで鍵を合わせるシーンはハラハラしました。
心臓に悪いよ(゚Д゚;)

 

3人の凶悪犯たちがマンディをからかいながら注文をするシーンは広東語と日本語字幕が全く異なります。
どういう意味なのか考察してみると、最初の注文の「ミルクティー」はおっぱいを連想させるような言い方。
これは広東語と日本語字幕は同じです。

次の注文は日本語字幕だと「ジンジャーエール」になっていますが、広東語だとおそらく「トースト」。
なぜトーストかというと、トーストは広東語で「西多士」と書くのですが、「西(サイ)」という漢字と、女性器を意味する「閪(ハイ)」の漢字をかけているのかなって。
違うかなぁ?

次の注文は日本語字幕だと「マンゴープリン」ですが原語ではおそらく「蒸留水」。
これは蒸留水の「蒸(チェン)」という言葉と「精子」の「精(チェン)」とかけていると思う。
2つの漢字は発音が全く一緒なんですよね。
ちなみに「精子」は日本語も広東語も同じ漢字です。

 

現場に落ちていた段ボールに書かれた字をメイシーが読み間違えて、ベンが訂正するシーン。
初見では意味が分からなくて「???」でした。
またまた考察してみました。

段ボールに書かれていた文字は項羽が詠った「垓下の歌」の一部、「力抜山兮氣蓋世」です。
日本では「抜山蓋世」という言葉の四字熟語がありますが、項羽の詩から引用されたものです。

広東語で発音すると(カタカナ表記には限界があるのでお許しを)「レッバッサーンハイヘイコーイサイ」と読むのですが、メイシーは、「レッバッサーンファンヘイコーイサイ」と読み間違えます。
「兮(ハイ)」の漢字を「分(ファン)」と間違えて発音していたのです。
漢字が似ているので、殴り書きだと間違えるかも。
なぜサムたちがメイシーの読み間違えで笑っていたのかというと、「兮」という漢字は先ほど記述した女性器を意味する「閪」と発音が似ています。
日本語ではどちらも「ハイ」と発音しますが、声調が異なります。
「兮」は第4声。
「閪」は第1声。
これは「兮(ハイ)」って読むんだよ、「閪(ハイ)」じゃないよ。「兮(ハイ)」だよ。
といった感じで、下ネタを連想させるようにメイシーをからかっているのだと思います。

これは日本語字幕で表現するのは物凄く大変だと思います。
意訳しないと伝わらないもんなぁ。

 

この作品は恋愛要素も見どころです(*‘∀‘)
だから余計物語の結末がボディブローのように効いてくるんですよね…。

 

プレイボーイなジミーにはたくさんの彼女がいて、ジミーが入院した時には病院へ多くの女性が駆けつけます。
何人女おんねん(笑)

 

マンディはケンに好意を抱いていて、サムがマンディとケンをくっつけようとしていますが、サムもマンディが好きなので悩ましいのです(>_<)
ケンがマンディに財布を返しにいく様子を外からこっそり覗いて勝手にアテレコするサムが笑える(´▽`)

 

あとケンはメイシーの態度を見て自分に好意を持っていると思っていて、ケンはメイシーを呼び出して気持ちには答えられないと断るのですが、メイシーはケンに恋愛感情を持っていなくてケンの勘違いなんですよね(;^ω^)
かなり恥ずかしいよね(^▽^;)
メイシーの好きな人はジミーなのです。
ジミーはプレイボーイだから大変だなぁ(^^;)

 

ベンにいたっては長い結婚生活を経て奥さんがようやく三つ子を妊娠。
でもベンには愛人がいてその愛人は癌に侵されています。
妻を取るか、愛人を取るか、どちらを選べばいいのか悩んでいます。
ベン、なかなかやりよるな( ̄▽ ̄)

 

ラストは救われない内容ですが、私は気に入っている作品です。
劇中の音楽も凄く好きなんですよね。
ただ凶悪犯たちの残虐性には憤懣やるかたない思いです。
絶対にフィクションの世界だけであるべき内容です。