少林寺VS忍者

少林寺VS忍者

原題 中華丈夫

製作 1978年

めぐちゃんの満足度 ★★★★★

 

劉家良(ラウ・カーリョン)監督、劉家輝(ラウ・カーファイ)主演のカンフー映画です。

 

名家のお坊ちゃまであるタオ(劉家輝)には弓子(水野結花)という許嫁がおり、弓子の父親と付き合いがあるタオの父親(井淼)はタオと弓子を結婚させようと考えています。
2人はめでたく結婚しますが、結婚生活が始まって早々、裏庭の方から弓子の大きな声を聞く使用人のショウクアン(鄭康業)たち。
夫婦喧嘩だと思ったショウクアンはタオの父に知らせますが、弓子の大声は武術の稽古によるものでした。

 

弓子の暴走は止まらず、次々と庭の壁やオブジェを破壊してしまうため、タオはついに弓子に稽古の禁止を命じます。
タオは中国武術を弓子に教えると提案しますが、弓子は日本の武術以外習うつもりはないと拒否します。
弓子は日本から大量の武器を取り寄せ、さっそく日本刀を抜くと、ショウクアンの脇をかすめ、服が切れます。

 

タオの武館にあった武器を全て外に運び出した弓子は武館を占拠します。
タオは弓子を問いつめると、日本の武器を置くためにタオの武器を運び出したのだと答えます。
互いの主張はぶつかり合い、どんどん喧嘩はヒートアップしてついに2人は戦うことになります。
しかし実力はタオの方が上で弓子の攻撃はことごとく防がれてしまいます。
追いつめられた弓子は忍者になり、暗殺道具を用いてタオを攻撃。
卑怯な技を使わず正々堂々と戦うべきだと弓子を強く非難すると、弓子は去って行きます。

 

弓子は日本へ帰国し、幼少時代から弓子と武術を学んで育った日本の武術家の武野三蔵(倉田保昭)は夫にやり返すべきだと言います。
タオの父親はすぐ日本へ行って弓子を連れ戻して来いとタオに言いますが、ショウクアンはわざわざ日本へ行かなくても挑戦状を出して挑発すれば弓子は帰ってくると言います。
しかし挑戦状を読んだ武野は日本人への挑戦だと解釈し、師匠の加藤先生(加藤直三)に相談すると、加藤は7人の武術家たちを引き連れてタオの屋敷へ向かいます。

 

剣道の達人の原田(原田力)がタオの前に立ちはだかり、戸惑いを見せるタオですが、すぐに戦いの体勢に切り替えます。
タオの剣が原田の背後を捉え、原田は負けを認めます。
負けた原田は自分の刀をタオに差し出しますが、タオが受け取らなかったため原田は切腹を決断。
寸前で武野が原田の切腹を制止し、明日から1人ずつタオの相手になると宣言し、いったん引き上げて行きます。

 

タオは大師匠(袁小田)や仲間たちに状況を説明します。
明日の相手は空手の達人で厳しい戦いになると予想し、大師匠は力強い「剛」の空手には、しなやかな「柔」の技で挑むべきだといいます。
タオは酔拳の達人であるソー(劉家良)から技を教わろうとしますが、ソーは人に拳法を教えないので、動きを見て技を習得することにします。

 

弓子はタオに対し、負けた時に刀を相手に差し出すのが日本の武士道精神で、原田が切腹しようとしたのはタオがその敬意を受け取らなかったためだと言及します。
弓子は自責の念に駆られ、戦いを中止してほしいと武野を説得しますが戦いは止められません。

 

今日の相手は空手の達人の角(角友司郎)です。
力強い空手に対し、タオは習得した柔軟な酔拳で挑み、角を倒します。

 

次の日の相手はヌンチャクの達人の竜咲(竜咲隼人)です。
竜咲は右手にヌンチャク、左手にトンファーという独特なスタイルで、タオは三節棍で挑みます。
いい勝負を繰り広げますが、竜咲はヌンチャクと三節棍の長さが違うので不公平だと言い、勝負を降ります。

 

次の日は槍の達人の八名(八名信夫)が相手です。
タオは槍纓で八名を翻弄し、倒します。

 

次の日は釵の達人の中崎(中崎康貴)で、タオは胡蝶双刀で挑みます。
格子を介すると剣が届きづらく、苦戦するタオ。
格子ごしに中崎の片方の釵を奪い、奪った釵を返すと中崎は1本の釵で戦い始めたため、タオも1本の刀で戦います。
タオは釵を素早く中崎の腰に収めると、中崎は戦意喪失してしまいます。

 

次の相手は柔道の達人の大前(大前鈞)です。
勝負は1日1人のはずですが、予定より早く現れた大前はここで待つと言い、武館に居座ります。
体を休められないタオには不利な状況で、これまで順調に勝ち進んで来たタオは大前の柔道に苦戦します。
するとタオはショウクアンに油を塗ってもらい、相手が捕まえられないようにします。
ショウクアンは油の染み込んだ布を投げ、これを踏んだ大前は転び、床に倒れた大前は降参を宣言します。

 

最後の相手は武野です。
警戒するタオに武野が次々と攻撃を仕掛けます。
この場では決着せず、清水湖で最終決戦を行います。

 

槍や剣の激しいぶつかり合い、忍術の多彩な攻撃に苦戦しながらも剣術で優勢を保つタオ。
武野は湖の方へ移動し、湖に潜って水遁の術を使います。
これに気づいたタオは筒を捕まえようとすると、筒からしぶきと共に毒針が飛び出し、タオは意識を失います。

 

タオを倒した武野は加藤の所へタオを連れて行きます。
意識を失っているタオに制裁を加えようとするとタオは目を覚まし、攻撃をかわします。
タオは毒針を食らっておらず、気絶したふりをしていたのです。

 

毒針をかわしたタオの神業に感服した武野は潔く負けを認めます。
挑戦状は弓子個人に宛てたもので、決して日本武術界への挑戦ではないとタオは釈明します。
そして文化の違いから日本の礼儀を知らず、無礼を働いたことを陳謝し、原田の刀を受け取るタオなのでした。

 

この作品は日本人がわりと良心的に描かれています。
カーリョンさんは本物の武術家なので、武徳を重んじるから相手に敬意を払う精神が作品にも反映されているのかな。
お互いを尊重する姿勢って大事ですね。
そうすれば争いを少しでも減らせると思うし。
マウントって動物の本能だから抗うのは難しいけど相手を敬う気持ち、心がけたい。

 

それにしても弓子は日本人なのに何で吹き替えは日本人が行わないのでしょうかね?
人手が足りなかったのかな?日本人なのに日本語が片言だから違和感がある(^^;)
加藤先生も吹き替えが日本人じゃないですね。
あと加藤先生、弓子のことを「マユミ」って呼んでるし…(´∀`)

 

八名信夫といえば青汁の「まずい!もう一杯!」でおなじみ(^ω^)
私は八名信夫氏は青汁のおじさんというイメージが強くて、プロ野球選手だったことは大人になって知ったんですよね(^^;)

 

負けた相手に刀を差し出すことは知らなかったです。
わたくし一応中学生の頃は剣道部でした(;^ω^) でも全然強くない(笑)
スパルタ部活じゃなくてお気楽部活だったからなぁ(;´∀`)

 

弓子が白無垢姿を披露する結婚式のシーンで不吉だとざわついていましたが、中国だと白は「死の色」です。
日本における白のイメージは「神聖な色」で慶事でも弔事でも使えます。
白無垢はこれから嫁ぐにあたり、今までの自分は一度死に、生まれ変わるという意味があるそうです。
あとこれから嫁ぎ先の色に染まるという意味もあったかな。
中国では白は弔事にしか使いません。
中国の慶事はとにかく赤です。赤!赤!赤!
しかし現在では西洋文化が定着し、白いウエディングドレスを着る方も多いそうです。

 

日本語字幕だと弓子はタオの武器のことを「ガラクタ」と表記していましたが、オリジナル音声(私は広東語音声で視聴)で聞いてみると、「廢物(ファイマッ)」って言っていました。
「廢物」は「ゴミ」という意味です。
夫の使う武器に対してゴミ呼ばわり…。
ちょっと弓子にイラっとした人も少なくないはず(*_*)
そして2人の喧嘩に巻き込まれるショウクアンが超かわいそう(;'∀')
そういえば弓子がタオのことメッチャ応援してたけど、こんな事態になった元々の原因は弓子にあるんだよね(゚Д゚;)

 

本作では酔拳の蘇乞兒を演じるのはカーリョンさんです!
あれで強いからやんなっちゃうよね(笑)
輝哥がインタビューで、酔拳映画の元祖は「少林寺VS忍者」であり、ジャッキー酔拳より先だと仰っていましたが、公開日はジャッキー酔拳の方が先なんですよね。
製作が先だったりするのかな?
香港だと製作途中で構想をパクられるってよくあるそうですし。
でももっともっと古くに遡ると、酔拳をモチーフにした作品って存在してそう。