スリ

スリ

原題 文雀

製作 2008年

めぐちゃんの満足度 ★★★★★

 

杜琪峯(ジョニー・トー)監督のサスペンスドラマ作品です。
サスペンスといっても暗い感じではなく、比較的明るい雰囲気の作品となっております。

 

ケイ(任達華)、ポー(林家棟)、マー(張滿源)、ソウ(羅永昌)の4人はスリで生計を立てています。

 

写真が趣味のケイは街でファインダーを覗きこんでいると、慌てて逃げるチュンレイ(林熙蕾)を見かけ、シャッターを切ります。

 

賭博に興じるポーの前にチュンレイが現れ、意気投合した2人はお酒を飲みます。
ポーはチュンレイの装飾品を盗もうと企みますが、酔い潰れたポーが意識を失っているうちにチュンレイはポーの腕時計を盗んで去ります。

 

次にソウの前に姿を現したチュンレイは電話番号が書かれた紙をソウに渡し、その後チュンレイはバイクに乗ったマーと接触します。
マーはチュンレイを街まで送り届けると、チュンレイはマーに電話番号を聞いて去ります。

 

再びケイの前に姿を現したチュンレイはケイを車に乗せると、ケイの自宅へ連れて行くように頼みます。
ケイはチュンレイがすぐそばに住んでいることを知りますが素性が分からず、ケイは隙をついてチュンレイの財布を盗み、彼女の身分証を手に入れます。

 

街でチュンレイを見かけたケイは逃げる彼女の後を追いかけますが、逃げたのはチュンレイに扮した男で、ケイは男たちに取り囲まれて暴行され、腕を負傷します。
ケイ以外にチュンレイに関わったポーとソウは脚を負傷し、マーは頭部を負傷します。

 

4人はチュンレイを捜し、ビルの屋上まで追いつめます。
チュンレイを問いつめると、彼女は資産家のフー(盧海鵬)の世話をしていることを打ち明けます。
欲しい物は何でも与えられ、お金には不自由していませんが自由がなく、一刻も早くフーの元から去って本土へ帰りたいと考えていますが、チュンレイを束縛して手元に置いておきたいフーは彼女の帰国を許しません。
チュンレイはポーから盗んだ腕時計を返してケイたちに助けを求めますが、ケイは関わりたくないと言って断ります。

 

ポーの腕時計の裏にはチュンレイの電話番号が書かれており、放っておけないポーはチュンレイを助けることにします。
ポーの気持ちを汲んだ3人も協力します。

 

チュンレイが本土へ戻るためのパスポートはフーの金庫の中に保管されていますが、金庫の鍵はフーが肌身離さず身に着けています。
ポーとソウは患者を装ってフーが通院している治療院を訪れ、ピザの配達員に扮したマーは看護師たちに下剤入りのピザを渡して治療室から追い払います。
この隙にポーとソウはフーから鍵を奪い、治療院のビルの屋上から鍵をつけた風船をマーのところに飛ばします。
しかしフーの仲間に鍵を奪われ作戦は失敗します。
さらにフーはケイたちがスリであることを告発し、4人は街に顔写真を晒されてしまいます。

 

ケイはフーの部下のロン(林雪)に呼び出されて邸宅へ向かうと、すでに仲間3人の姿がありました。
4人は解放されますが、スリとしてのプライドを傷つけられたケイは再びフーの前に現れ、チュンレイの解放を求めます。
フーはチュンレイのパスポートをケイに渡すと、パスポートを持って中環から出ることができればチュンレイを解放すると約束します。
フーは元凄腕のスリで、スリ同士の戦いの火蓋が切られます。

 

雨が降る街中でフーの部下たちはケイが持つパスポートを狙います。
最初の刺客を退けますが、次々と刺客が現れ、姿を現したフーにパスポートを奪われます。
ケイは剃刀を使ってフーからパスポートを取り戻し、剃刀でケイを傷つけてしまったフーはスリのタブーである相手の血を流したことに言及して負けを認め、約束通りチュンレイを解放します。

 

4人は本土へ帰るチュンレイを少し名残惜しそうに見送るのでした。

 

エレクションのような黒社会ものではなく、軽快でユーモラスで非常に楽しめます(*^-^*)
エレクションシリーズも面白いですけどね(怖いけど…)

 

本作の撮影は4年かかったそうで、時代と共に失われていく香港の古い街並みや文化を記録として残したいというコンセプトで本作「スリ(文雀)」を撮ることを決めたトー監督。
前回レビューした「燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘」はカンフー愛を感じましたが、「スリ」は香港愛を感じて嬉しい(^-^)

 

トー監督は本作をミュージカル映画として撮りたかったと仰っていて、予算の関係で実現はしませんでしたが雨の中でのスリのシーンはフランスのミュージカル映画シェルブールの雨傘」の雰囲気を取り入れているそうです。
私は普段そんなにミュージカル映画を観ないのですが、シェルブールの雨傘は結構好きです(*^^*)
小粋で、軽快で、衣装やインテリアの色彩が美しくて引き込まれます。
フランス映画って色彩のセンスが卓越していますよね(・o・)
ちなみに「シェルブールの雨傘」は広東語で「秋水伊人(チャウソイイーヤン)」といいます。

 

原題の「文雀(マンチョク)」とは「文鳥」という意味ですが、広東語のスラングで「スリ」という意味もあります。
その昔、中国の占い師が文鳥を使って占いを行っていた際に文鳥の動きがとても素早かったので、文鳥にちなんで手技が素早いスリのことを「文雀」と呼ぶようになったそうです。
文雀というタイトルは上記のようにスリを表している他に、鳥かごの中にいる文鳥は自由を奪われたチュンレイを思わせますよね。

 

何と言っても本作の見どころは終盤のスリ対決のシーンです(*‘∀‘)
雨が降る中で繰り広げられる攻防、いい映画にセリフは不要だと思わされる演出の素晴らしさ。

 

コメディ部分も楽しくて最高♪
狭いエレベーターの中でのシュールなやりとりや、羅永昌(ロー・ウィンチョン)の女装も楽しい(^o^)
でもあんまり違和感なくて、実際にああいうおばさんいそう(笑)
フーの手下たちの仰々しい動きも作風にマッチしていてイイ感じ♪

 

あとトー監督といえば男たちの友情ですよね(^ω^)
今回も作風は違えど、しっかり4人の男たちが団結して女性のために危険を冒してくれました。
最初は美しいチュンレイに魅了されてデレデレしていた男衆ですが、みんなプロのスリなのでやる時はやるんです!!
チュンレイを見送るシーンでは、もう会うことはないと言っているケイが一番名残惜しそうにしているのがカワイイ( *´艸`)

 

燃えよデブゴン4 ピックポケット!」のレビューの時にも書いたけど、口の中に剃刀入れるのやっぱ怖いわ(;'∀')
終盤のスリ対決のシーンではケイにどつかれたフーの手下が口の中に入れていた剃刀を飲み込んでしまうという描写があります(;゚Д゚)(もちろん実際には飲んでいません)

 

チュンレイの役名を漢字で書くと「珍妮(チャンネイ)」で、通常はイングリッシュネームの「ジェニー」にあてられる漢字です。
チュンレイという発音は英語の発音表記だと思われます。
今回は日本語字幕に準じてチュンレイと表記しました。

 

劇中で任達華(サイモン・ヤム)演じるケイは写真を趣味としていましたが、実際に華哥は写真や絵が好きで、自身が撮影した写真の書籍を出版されています。
本当に多才な方ですね(*´ω`*)