恋する惑星

恋する惑星

原題 重慶森林

製作 1994年

めぐちゃんの満足度 ★★★★★

 

4月1日に恋人のメイにフラれたモウ(金城武)はメイが好きだったファストフード店ミッドナイト・エクスプレスで仕事帰りの彼女を待ち続ける。

 

5月1日はモウの誕生日。
モウは5月1日期限のパイン缶を30缶購入し、全て食べてもメイが戻らなければ恋の期限切れを受け入れることにする。

 

警察官のモウは半年追っていた犯人をついに逮捕した。
いつも嬉しい知らせがあった時は真っ先にメイに伝えていたが、メイにはすでに別の男の影。

 

パイン缶を食べきったモウは気持ちを吹っ切るためにミッドナイト・エクスプレスで働くメイ(關莉娜)を誘おうとするが失敗。
二人のメイにフラれたモウは失恋で傷ついた心を紛らわすために次々と友人を飲みに誘うが都合はつかず、結局一人で酒を飲みに行く。

 

金髪の女(林青霞)は西洋人の男から麻薬密輸の依頼を受ける。
重慶マンションの外国人たちは運びの手伝いを申し出ると金髪の女は彼らの身なりを整えさせる。
スーツケースの荷物に麻薬を隠して密輸しようとするが、金髪の女が搭乗手続きをしている間に麻薬を持った外国人たちは忽然と姿を消す。

 

金髪の女は逃げた外国人たちを捜し回り、仲間の娘を誘拐して人質にすると娘の父親は仲間の居場所を白状する。
しかし逆に外国人たちから命を狙われてしまった金髪の女は走って逃げ出す。

 

モウはメイを忘れるために次に出会った女性に恋をすると決心し、一人で酒を飲んでいた金髪の女を見つけて声をかける。
広東語、日本語、英語で話しかけても返答がない。
北京語で話しかけるとようやく金髪の女は口を開く。
モウは失恋したことや今日が誕生日であることを彼女に告げ、根気よく口説き続けるが相手にされない。

 

バーの閉店時間まで飲み続けた二人。
金髪の女が休みたいというのでモウは彼女をホテルへ連れて行く。
金髪の女は眠ってしまい、モウは食事をしたり映画を観たりして時間を潰す。
夜が明けるとモウは彼女が履いていたヒールを脱がせて綺麗に拭いてから部屋を出る。

 

モウは雨が降る中で球場を全速力で走る。
走って汗をかいて体内の水分を蒸発させて涙が出ないようにするためだ。
もうポケベルは必要ないので球場に置いていこうとするが突然ベルが鳴る。
伝言を聞きにいくと金髪の女が「誕生日おめでとう」とメッセージを残していた。

 

金髪の女は裏切った西洋人の男を捜し出して射殺する。
地面に落ちていたオイルサーディン缶の期限は94年5月1日だった。

 

店長(陳錦泉)のいとこのフェイ(王菲)はミッドナイト・エクスプレスで働き始める。
店内に大音量で流れる「夢のカリフォルニア
フェイは夜食を買いに来た警察官633番(梁朝偉)に恋をする。

 

633番には客室乗務員の恋人(周嘉玲)がいる。
商売上手の店長はサラダ以外にフライも勧める。

 

ある日、633番は夜食を買わなかった。
彼女にフラれてしまったのだ。

 

633番の元恋人がミッドナイト・エクスプレスを訪れて店長に手紙を預ける。
633番がミッドナイト・エクスプレスにやって来るとフェイは元恋人が来ていたことを伝えて手紙を渡そうとするが、633番は後で受け取りに来ると言い残して去って行く。

 

633番は担当地区が変わって店に来なくなるが、フェイは露店で食事をする彼と再会する。
フェイは手紙を郵送するために633番の住所を聞き出し、店長の使いに出かけるふりをして留守中の彼の自宅へ行く。
想いに気づいてほしくてフェイは633番の部屋の模様替えを始める。

 

彼女が戻って来たような予感がした633番は自宅へ戻るが彼女の姿はない。
フェイは金魚が入ったポリ袋を持って633番の自宅を訪れると、彼が居たことに驚いたフェイは足がつって動けなくなり、しばらく彼の家で休むことに。
鈍感な633番はフェイが置いていったCDや部屋の変化にすら気づかない。

 

新しい石鹸、新しいタオル、味の違うオイルサーディン缶、徐々に部屋の変化に気づき始める633番。
633番の自宅で彼と鉢合わせしてしまったフェイは慌てて彼の自宅から出て行く。

 

鈍感な633番もようやくフェイの気持ちに気づき、ミッドナイト・エクスプレスを訪れるとフェイをデートに誘う。

 

バー「カリフォルニア」でフェイを待ち続ける633番。
店長がやって来て633番にフェイから預かった手紙を渡す。
フェイは「別のカリフォルニア」に行ってしまったのだ。

 

コンビニで元恋人と偶然再会する633番。
彼女は新しい男と一緒だった。

 

633番はフェイからの手紙を読まずに一度捨ててしまうが、気になって手紙を開封する。
雨に濡れてしまった字が一部読めなかったが搭乗券のようだった。

 

1年後、客室乗務員になったフェイはカリフォルニアから戻り、ミッドナイト・エクスプレスを訪れると633番の姿があった。
商売上手の店長に店まで買わされてしまった633番。
633番はフェイを食事に誘うがフライトがあるからと言って断られる。
雨に濡れた手紙の搭乗券の行き先は読めなかったが633番は2人の新しい行き先をフェイに委ねる。

 

私が初めて観た王家衛ウォン・カーウァイ)作品です。
1994年の作品なんですね(;゚Д゚)
古臭さを全く感じないどころか非常に洗練されていてクール!!!
当時影響を受けたクリエイターは多かったのではないでしょうか。
調べてみると当時カーウァイ作品の亜流がやはり出回ったそうで。

 

1993年に「楽園の瑕」の撮影が終わると翌年の春には「恋する惑星」の撮影が始まります。
楽園の瑕の製作に時間と予算を費やし、製作会社に余裕が無かったので予算が限られていて大がかりなことはできないとカーウァイ監督は仰っていましたが、時間と予算の制約がある中で本作を製作されたことに敬服いたします。

 

実は私、中学生の時に恋する惑星を知りました。
子供の頃の私はTVゲームが大好きで、アクション、RPG、シューティング、ジャンル問わずよくゲームで遊んでいました。
RPGゲームの二大巨頭といえば「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」の名前が挙がると思いますが、小学生の頃の私はドラクエ派でした。
しかしある時、友達に勧められた「ファイナルファンタジー7」にドハマりしてしまい、当時FF7のテレビCMで「寝不足にご注意ください」という注意を促していましたが、見事に寝不足になるまでやりこんでいました(;^ω^)

その後、私が中学生になると次作の「ファイナルファンタジー8」が発売され、こちらも相当やりこみました。
当時としては最高水準のCGや、ゲームに主題歌がついてタイアップするなど話題になりました。
今ではTVゲームに主題歌がつくのは当たり前となりましたが、当時はまだ少なかったのです。

前置きが長くなりましたが、このファイナルファンタジー8の主題歌を歌っていたのが「フェイ・ウォン」で、私はこの時に初めてフェイ・ウォンを知ったのです。
「Eyes On Me」という曲で、8cmシングルで発売されました。懐かし~!!
※8cmシングルってなんぞや?という方はググってください。

子供ながらにフェイ・ウォンの歌声に魅了された私はCDを購入してよく聴いていました。
「Eyes On Me」は歌詞が全て英語なのですが、今でも歌えます(^▽^;)
すっかりフェイ・ウォンのファンになった私ですが、当時はインターネットがまだ普及しておらず、彼女について調べるにもテレビや雑誌などに限られていました。
うろ覚えなのですが、たしかテレビの特集かなにかで「恋する惑星」の存在を知り、フェイ・ウォンが出演しているということでビデオを借りに行こう!と思っていたのですが、受験勉強が始まってしまったので作品を観る機会を失い、その後別のレジャーに興味が移ってしまったので、結局本作を鑑賞するのは大人になってからとなってしまいました。

 

改めて観ると、フェイ・ウォンは稀有な存在だと思います。
彼女の本業は歌手なので映画出演本数は少ないのですが、少ない映画出演でこれだけ強烈な存在感がある方はほとんどいないと思います。
本作のフェイ役は絶対にフェイ・ウォン以外には考えられません。
これは彼女の持つ天性の素質です。
カーウァイ監督がフェイ・ウォンを大変気に入っていたのも納得できます。
フェイだったら住居侵入も許せちゃうくらいチャーミングなんだよなぁ。
フェイとアメリは不法侵入も許します(え)

 

フェイ・ウォンの透き通るような歌声がたまらんのです(*´Д`*)
本作の主題歌である「夢中人」は「The Cranberriesクランベリーズ)」の「Dreams」のカバー曲なのですが、ぶっちゃけ私は原曲よりフェイ・ウォン版のほうが好きです♪

 

音楽といえば劇中で流れる選曲のセンスにも脱帽。
「California Dreamin'」「Things in Life」「What a Difference a Day Made」
あと劇伴音楽を担当した陳勳奇(フランキー・チェン)も素晴らしい。
フランキー・チェンはカーウァイ作品の「天使の涙(墮落天使)」でも音楽を担当されていて、第32回金馬奨で最優秀音楽賞(最佳電影音樂)にノミネート、第15回の香港電影金像奨で最優秀音楽賞(最佳原創電影音樂)を受賞されています。
私はフランキー・チェンといえば「ユン・ピョウ inドラ息子カンフー(敗家仔)」に出演されていた公子役の印象が強くて当初は作曲家だと知らなかったのですが、改めてフランキー・チェンの凄さを実感。

 

カーウァイ監督は構図に非常にこだわりを持っているようで、鏡やガラスを多用した奥行きのある幻想的な空間作りも作品の魅力の大きなひとつ。
長いエスカレーターのすぐそばにあるトニー・レオン演じる633番の自宅は撮影監督のクリストファー・ドイルの実際の自宅を使用しています。
すぐ目の前がエスカレーターって凄いですよね。

 

小さくなった石鹸を見て痩せたと心配する633番。
雨に濡れたボロボロのタオルは泣き虫。
大泣きしている水浸しになった部屋。
趣のある比喩も魅力。

 

本当は「警察官633番」ではなく「警察官663番」なのですが、ミッドナイト・エクスプレスの店長は「633番」って間違えているんですよね。
そういう細かいことを気にしない店長のおおらかな人柄がいいなぁ(*‘∀‘)

 

本作でトニー・レオンに心を奪われた女性も多いのではないでしょうか。
彼の魅力が存分に活かされている役柄だと思いました。
最後フェイ・ウォンを見つめる眼差しはドキドキしましたね(*'◇'*)

 

日本でも知名度が高い金城武
(現在は日本での露出が少ないから昔ほどの知名度はないかも。)
私は1998年の日本のドラマ「神様、もう少しだけ」を観て金城氏の存在を知りました。
劇中でパイン缶を食べるシーンがあるのですが、ウィキペディア情報だと金城氏はパイナップルが嫌いだと記載されていました(;^ω^)
この情報が本当だとしたら撮影時は大変だったでしょうね。