ハイリスク
原題 鼠膽龍威
製作 1995年
★★★☆☆
王晶(ウォン・ジン)監督、李連杰(リー・リンチェイ)主演のアクション映画です。
デビッド(王霄)率いるテロ組織は小学校を襲撃し、バスに時限爆弾を設置して教員と児童たちを拘束します。
テロ組織は金銭目的のために連続爆破事件を起こし、特殊部隊が到着すると爆発物処理担当のレイ上尉(李連杰)は仲間と共に時限爆弾の解除に当たります。
デビッドは爆弾の解除に手こずるレイを電話で呼び出して挑発し、爆発の時間が迫る中でデビッドから解除方法を聞き出すことができなかったレイは意を決して赤い配線を切るように仲間に指示しますが無残にも時限爆弾は爆発します。
バスの中に拘束されていた教員はレイの妻(關秀媚)で、児童の中にはレイの幼い息子も含まれており、全員が命を落とします。
妻と息子を失って失意の底に陥ったレイは特殊部隊を退きます。
2年後。
レイは香港で人気絶頂のアクション俳優であるフランキー(張學友)の用心棒とスタントの仕事を始めます。
表向きではスタントマンを使わないアクション俳優としてフランキーを売り出していますが、実はレイがフランキーの代わりに危険なスタントを行っています。
フランキーの撮影現場を訪れた女性記者のロク(邱淑貞)とカメラマン(谷德昭)は撮影した映像を観てフランキーがスタントマンを使用していたことを確認すると、プロデューサーのライ(李力持)に伝えてスクープにしようと目論みます。
ホテルで宝飾展が開催されることになり、デビッド一味は宝飾品の強奪計画を企てます。
宝飾展当日の夜を迎えると招待されたフランキーは父親(午馬)とマネージャーのチャーリー(曹查理)と会場へ入ります。
会場にはフランキーのスクープを隠し撮りしようと企むライとロクの姿もあります。
レイは招待券を持っていないのでいったん会場を後にすると車でデビッドとすれ違い、彼の口癖から2年前のテロリストであることを確信します。
デビッドを追って会場のホテルにやって来たレイは支配人に危険を伝えますが取り合ってもらえません。
デビッドは招待客を装って正面から会場へ入り、武装したデビッドの仲間たちはホテルの裏口から侵入して次々と従業員に発砲します。
異変に気づいて動揺したフランキーは気づかれないようにその場を去ります。
ホテルの従業員として働いているフェイフェイ(周嘉玲)はデビッドの仲間の女で、フェイフェイの正体を知らないフランキーは彼女を必死で守ろうとしますが、デビッドの仲間のソンポン(周比利)が現れるとフランキーは一目散に逃走します。
宝飾展の会場はデビッド一味に占拠され、デビッドの仲間の男(譚偉強)は宝飾品を取り出すために防犯装置の解除作業を行います。
警察署に駆け込んだレイはホテルにテロリストがいることを伝えると、話を聞いた警察官のカム(楊宗憲)が協力してくれます。
レイとカムはホテルに乗り込んで従業員に扮したテロリストたちを蹴散らします。
カムは恋人のジョイス(楊采妮)からプレゼントされた通信機をレイに手渡します。
ホテル従業員のジョイスは人質として最上階の宝飾展フロアに監禁されています。
一方、ソンポンに捕まったフランキーは宝飾展フロアへ連れ戻されます。
レイとカムは宝飾展フロアへ突撃すると本性を現したデビッドが仲間と共にレイを襲います。
恐怖を感じた招待客たちは一斉にフロアの外に逃げ出し、ロクが現場の様子を撮影していることに気づいたデビッドは彼女から撮影テープを奪うように仲間に命じます。
デビッドの弟のラビット(林國斌)はロクに毒蛇を投げつけて撮影テープを渡すように脅します。
レイはロクを救出しますが、ロクが毒に侵されていることに気づいたレイは彼女を医務室へ連れて行きます。
機動隊が到着するとデビッドは逃走用のヘリコプターと捜査を攪乱させるために服役中の男の釈放を要求します。
逃げたフランキーとフランキーの父親はソンポンとフェイフェイに捕まって再び宝飾展フロアに連れ戻されます。
レイはカムから預かった通信機を使ってジョイスと連絡を取り、ロクの応急手当を終えると彼女が隠した撮影テープを回収しに行きます。
レイは執拗に襲ってくるラビットを激しい攻防の末に倒しますが、後から駆けつけたソンポンがレイに爆弾を投げ、爆弾をかわそうとしたレイは窓を突き破ってビルから落下してしまいます。
幸い緩衝シートに落下したため無事だったレイは状況を指揮官(段偉倫)に伝えて回収した証拠の撮影テープを渡します。
デビッド一味は一つ目の防犯装置の解除に成功して宝飾品を手に入れます。
痺れを切らしたデビッドは人質のチャーリーをビルから突き落とし、ジョイスは通信機でレイと連絡を取ろうとしますがフェイフェイに見つかって通信機を奪われます。
ロクはフェイフェイが投げ捨てた通信機を拾って屋上へ行ってはいけないとレイにメッセージを送りますが、レイは警察のヘリコプターを操縦して屋上へ向かいます。
屋上で待ち構えるテロリストたちはレイを総攻撃すると、バランスを失ったヘリコプターは宝飾展フロアに突っ込んで残りひとつの宝飾品を破壊します。
デビッドはロクを捕まえて彼女の体に爆弾を仕掛けると手が出せないレイはナイフをデビッドに投げつけます。
3つのうち2つの宝飾品を奪ったデビッドは被害者を装ってホテルから逃走を図ります。
ジョイスと協力してカムはフェイフェイを射殺し、ソンポンがフランキーの父親に手を出すと怒ったフランキーはソンポンに立ち向かいます。
ソンポンは強く、フランキーはヌンチャクで滅多打ちにされます。
フランキーはソンポンからヌンチャクを奪うとソンポンはナイフを持ち出し、熾烈な戦いの果てにフランキーはソンポンを倒します。
警察部隊が突入して人質にされた招待客は解放されますが、レイはロクに仕掛けられた爆弾の解除に苦悩します。
2年前と同じようにデビッドは電話でレイを挑発しますが、レイは冷静にダミーの配線の裏に隠されていた配線を見つけ出して切断すると爆弾は解除されます。
デビッドはこのまま逃走を図ろうとしますが、レイが投げたナイフには蛇の毒が塗られており、体に毒が回ったデビッドは命を落とします。
テロ組織は壊滅し、フランキーは今回の事件の経緯を報道陣に説明します。
緊急事態とはいえ警察指揮官を脅してヘリコプターを奪ったレイは警察で調書を取られることになるのでした。
-------------------------
本作を一言で言うなら「香港版ダイ・ハード」といったところでしょうか。
正直申しましてダイ・ハード第1作目の秀逸な脚本には及ばないとは思うのですが(本作に限らずあの完成度の脚本を作るのはかなり難しそう)アクション演出に関しては安定のクオリティーでさすがの香港映画といったところです。
決してつまらない作品ではないのですが、私が残念に思ったのは主役のリンチェイの活躍が乏しいことです。
もちろん彼のアクションシーンはあります。
あるんですけど、観終わった時にフランキー役の張學友(ジャッキー・チュン)のほうが強烈に印象に残るんですよね。
リンチェイがジャッキー・チュンに食われている感じです。
それはジャッキー・チュンの役柄が要因のひとつだと思います。
ジャッキー・チュン演じるフランキーは大人気アクションスターで、午馬さんと曹查理(チャーリー・チョウ)の風貌を見ればジャッキーファンの方ならお分かりいただけると思うのですが、フランキーは明らかに「ジャッキー・チェン」を彷彿とさせるキャラクターです。
しかもジャッキーだけではなくブルース・リーも取り入れています。
やりたい放題の王晶監督(;´∀`)
午馬さんはジャッキーパパこと房道龍(ファン・ダオロン)で、曹查理(チャーリー・チョウ)はかつてジャッキーのマネージャーをしていた陳自強(ウィリー・チャン)を明らかに意識したキャラクターです。
劇中で曹查理は自分のことをチャーリーだと言っていたけど、どう見てもウィリー・チャンです。
なかなかの再現度の高さにファンとしては嬉しくなってしまうのですが、当時のジャッキーの胸中を思うと少し複雑な気持ちであり、特に本作でのウィリー・チャンの扱いについては眉をひそめる演出ではあります。
おそらくリンチェイとジャッキー・チュンのW主演という扱いだと思うのですが、フランキーという強力なキャラクターを出されたらリンチェイでさえも霞んでしまうのも無理はないかも。
そもそもなのですが、本作のシナリオにジャッキーのパロディキャラがそんなに活かされているとも思えなかったり(^^;)
どうせやるなら大人気アクションスターのスタントに悪戦苦闘するリンチェイの姿を描くとか徹底的にジャッキーパロディに焦点を絞ってもっとコメディテイストな作品のほうが楽しめたかもしれない。
そうすればW主演でも二人のバランスが取れそうですし。
ジャッキー・チュンは「ワイルド・ブリット(喋血街頭)」の時の演技も素晴らしかったのですが、コミカルな演技も良いですな(*‘∀‘)
アクション俳優ではありませんがアクションシーンがかなり良くて、終盤の周比利(ビリー・チョウ)との戦いはリンチェイのお株を奪う勢いです。
序盤の頼りなさげな姿を観ていると失礼ながら「歌神」の異名を持つ大物歌手とは思えない(^^;)
そういえばビリー・チョウ演じるソンポンはフランキーと戦うつもりだと豪語していたのに何で初対面の時に地雷を仕掛けちゃうのよ?
そこでフランキーが地雷を踏んで死んだら戦えなくなっちゃうじゃん(;'∀')
悪役勢のキャスティングはなかなか良くて、デビッドを演じた王霄(ケルヴィン・ウォン)の気障な悪役はばっちりハマっていますし、周嘉玲(ヴァレリー・チョウ)の悪女っぷりも良いですね。
ラビット役の林國斌(ベン・ラム)はやたら身なりを気にするナルシストな悪役。
ベン・ラムさんイケメンなのに今回ほとんどサングラスをかけていてお顔がちゃんと拝見できないのが残念( ;∀;)
子供の下半身がばっちりアップで映っていたけど今だと完全アウトだろうなぁ。
ニルヴァーナのNevermindのジャケットに写っていた丸裸の赤ん坊が大人になってから訴えたという話もあるので、児童の裸については近年厳しい目が向けられていますし、大人と違って子供は意思表示できないですからね。
日本のファンがフランキー目当てに香港にやってくるという演出がありましたが、昔本当にジャッキーツアーみたいなものがあったんですよね。
ジャッキーがファンと一緒にご飯を食べたり、今だと考えられないぐらいとても距離が近かったそう。凄い時代…。
ただそのためかジャッキーは何度か危ない目にあったらしいですけどね…。