港片迷阿欣

大好きな香港映画の感想を書いているブログ(ネタバレあり)

阿羅漢

阿羅漢

原題 南北少林

製作 1986年

★★★★★

 

劉家良(ラウ・カーリョン)監督、李連杰リー・リンチェイ)主演のカンフーアクション作品です。
2023年1月16日に于海(ユエ・ハイ)氏が亡くなりました。享年81歳。
謹んでお悔やみ申し上げます。
今回はユエ・ハイ氏が出演されていた作品を取り上げてみようかと思います。
ユエ・ハイ氏は蟷螂拳の使い手で本物の武術の達人ですが、役者として数々の作品に出演されていました。
顔が良いので画が映える(*´▽`*)

 

清王朝時代。
北の嵩山少林寺の修行僧チー(李連杰)は王朝の裏の支配者であるフー総督(于承惠)に両親を殺され、恨みを晴らすために日々厳しい鍛錬に明け暮れています。
紫禁城でフー総督の誕生日祝いが行われることを世俗の弟子たちから聞いたチーは、祝いが行われる会場に侵入してフー総督の暗殺を企てます。

 

南にある莆田少林寺では大師の姪であるイェン(黃秋燕)が親を殺された恨みを晴らすべくフー総督の命を狙っています。
大師からイェンの手助けをするように命じられた莆田少林寺の修行僧チャオ(胡堅強)は獅子舞に身を隠して紫禁城に潜入します。

 

誕生祝いの催しが盛大に行われる中、官兵になりすましたイェンはフー総督に近づいて同志と共に矢を放ちますが、フー総督を仕留めることはできませんでした。
会場は騒ぎになり、チャオはイェンを連れて逃げ出します。
チャオたちは押し寄せる官兵たちに追いつめられると、チーは爆竹を投げて官兵たちの目を眩ませ、この隙にチャオたちは姿を消します。
憤激したフー総督は暗殺者たちの捕縛を部下たちに命じます。

 

フー総督の暗殺に失敗したイェンとチャオは莆田少林寺に戻ろうとしますが、フー総督が暗殺者を捕まえるために各所に検問所を設置してしまったため簡単に通り抜けることはできません。
事情を知ったチーは羊を大量に購入して羊飼いになりすまし、チャオとイェンに羊の着ぐるみを着せ、羊の群れに紛れ込ませて検問を突破しようと考えます。

 

一つ目の検問を突破しますが、二つ目の検問で提督(計春華)が女装したチーを気に入ってしまい、やむを得ずチーは正体を明かして提督と戦います。
兵の数が多くて埒が明かないため、チーはイェンを馬に乗せて逃げます。
チャオは官兵の服を奪って兵になりすまし、隙をみて逃げ出します。

 

小屋で合流したチー、チャオ、イェンは互いに少林寺の同門であることを知り、フー総督への恨みという共通の目的を確認した3人は結束します。

 

イェンの足首には両親からもらった鈴の輪がつけられていて、チーの足首につけている鈴の輪と同じ物でした。
イェンは同じ鈴を持っていた相手が男性だった場合はその男性と結婚するように両親から言いつけられていました。
チーは同じ鈴の輪を持っていることをイェンに言い出すことができませんでした。

 

野宿をしているチーたちの前にチーの師匠であるシー(于海)が少林僧たちを連れてやって来ます。
無断で寺を抜け出したチーを捜していたシー師匠はチーを嵩山少林寺へ連れ戻します。

 

ウーロウ大師(閻滌華)が莆田少林寺を訪ねることになり、シー師匠はウーロウ大師の護衛を命じられます。
無断で寺を抜け出したチーは罰として3年の面壁を命じられますが、房内にいた絵描きの助けを借りて房を抜け出します。

 

再び嵩山少林寺を抜け出したチーは同じ鈴を持っているイェンに会うために莆田少林寺へ向かいます。
イェンに好意を抱いているチャオは葛藤しながらもチーをイェンの元へ案内します。
しかしフーの側近たちは莆田少林寺に暗殺者がいることを特定し、イェンはフー総督に捕まってしまいます。

 

水路を移動しているフーの船を見つけたチーとチャオは先回りをして船を待ち伏せします。
チーたちはイカダをフーの船に衝突させて動きを止め、船内に乗り込みます。
フーの側近(孫建魁、劉懷良)や官兵たちが次々とチーとチャオに襲いかかります。

 

ついにフー総督自らが動き出し、チーとチャオはフーの攻撃に苦戦します。
そこへ少林僧たちを引き連れたシー師匠が現れてチーたちに加勢します。
これにより劣勢となったフー総督は川へ飛び込み、いったん地上に退避します。

 

シー師匠は逃げるフー総督の前に立ちはだかり、棍を使って戦います。
棍が瓜棚に引っ掛かると、シー師匠は棍を捨てて蟷螂拳で応戦します。
チーとチャオが駆けつけると、チャオは瓜棚を破壊します。
倒れた瓜棚の下敷きになったフー総督は身動きが取れなくなり、駆けつけたイェンが刀でフー総督の首を切り落とします。

 

チーはイェンへの想いを諦め、自分が持っていた鈴の輪をチャオに渡して嵩山少林寺へ帰って行きます。

 

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少林寺」「少林寺2」に続く、「リンチェイ少林シリーズ(勝手に名付けました)」の第3作目です(^v^)
第1作目の少林寺は時代設定が隋でしたが、本作は時代が一気に進んで清となっております。

 

今回はショウブラザーズ製作で、監督は張鑫炎(チャン・シンイエン)ではなく劉家良(ラウ・カーリョン)が務めています。
カーリョンさんにとっては非常に苦労の多かった作品だとか。

 

本作の製作の話が持ち上がったのは1983年頃で、83年といえばカーリョンさんがとてもかわいがっていた俳優の傅聲(フー・シェン)が事故で亡くなった年でもあり、当時カーリョンさんは映画が撮れなくなるほどひどく落ち込んでしまいます。
それでも仕事なので映画を撮り続けますが、そんな時に中国でリンチェイを主演にした映画を撮る仕事が入ります。
しかし当時中国と台湾の関係が非常に悪かったので(近年も不穏な状況ですが…)中国で映画を撮ったら台湾で仕事ができなくなることを恐れたカーリョンさんは当初はこのオファーを断ったそうです。
ショウブラ代表の邵逸夫(ランラン・ショウ)はどうにかカーリョンさんを説得すると、最終的にカーリョンさんは本作の製作を引き受けます。

 

製作が始まったのはいいのですが、文化が違うので広東語は通じないし、映画の撮り方は違うし、とにかくコミュニケーションを取るのに大変苦労されたようです。
さらに80年代に入るとショウブラザーズは徐々に低迷していき、失業が懸念される事態に。
撮影は難航し、1986年にようやく本作が公開されますが、現代劇が主流となっていた80年代中盤はすでにカンフー映画は下火となっており、不発とは言わないまでも超絶ヒットには至りませんでした。
1986年といえば「男たちの挽歌」の年だもんね(^^;)

 

ちなみに本作は熊欣欣(ホン・ヤンヤン)が映画界に入るきっかけになった作品です。
広西武術隊に所属していたヤンヤンは武術ができる人材を探していたカーリョンさんのオファーを受けて本作でリンチェイのダブルを務め(少林僧役で出演もされています)、その後シネマシティと契約して本格的にスタントの仕事を始めることになります。

 

興行収入的には爆発的なヒットではなかったかもしれませんが、私は大好きな作品です(*^^*)
撮影が難航したとは思えないほど、カンフーアクションはしっかりと仕上がっています。
でも中国側も本物の武術家たちばかりなのできっと劉家班と衝突する場面もあったかと思います。

 

復讐劇ですが、全体的に明るい雰囲気でコメディ要素も多くて楽しめます(*‘∀‘)
※最後はやや残酷描写あり。

 

序盤で殺生を禁じている大師役の閻滌華(イェン・ディホア)が「虫をヒナに食べさせれば虫が死ぬ、ヒナに虫を食べさせなければヒナが死ぬ」と真剣に葛藤する様子がちょっと微笑ましい(笑)
でも結局終盤で官兵を突き飛ばして殺そうとしていました(^^;)
悪党には無慈悲な大師(;^_^A

 

検問を通過するシーンでリンチェイ演じるチーが女装をするのですが(三つ編みでカワイイの♪)、饅頭をおっぱいの詰め物にしていてその饅頭をチャオたちに食べさせようとします(^^;)
汗まみれの饅頭食うのちょっと嫌だな(苦笑)

 

少し恋愛要素もあります♪
許嫁の証である鈴の輪で結ばれているチーとイェンなのですが、チーは出家していますし、チャオというライバルもいて結局自分の想いを秘めたままイェンの前から立ち去るんですよね(T_T)
でもチャオも少林僧だから恋愛は禁止だと思うんですけどね。

 

胡堅強(フー・チェンチャン)は少林寺の時と比べるとあどけなさがなくなって精悍なお顔立ちで大人っぽくなっている印象です(*^^*)
メイクの影響もあるかな?

 

最後の戦いでフー総督を4人で追いつめるのは少し卑怯な気がしないでもないのですが、悪い奴なので仕方ないか(´∀`)