港片迷阿欣

大好きな香港映画の感想を書いているブログ(ネタバレあり)

斗え!デブゴン

斗え!デブゴン

原題 身不由己

製作 1980年

★★☆☆☆

 

洪金寶(サモ・ハン・キンポー)が監督・主演を務めたカンフーアクション作品です。

 

カンフーの腕に長けているチャン(洪金寶)は武術の達人ファンタン(鍾發)に果たし状を送りますが、チャンは決闘の場所に辿り着く前に町でファンタンと遭遇します。
ひょんな小競り合いからチャンに敵わないと悟ったファンタンはユン師匠(元武)がいる武館へチャンを連れて行きますが、チャンはユン師匠に圧勝します。
敗れたユン師匠は大師匠の大師(麥嘉)を呼び寄せますが、チャンは大師もあっさり倒してしまいます。

 

チョンヤウ(梁家仁)は町で荷車に轢かれそうになっていた男性を助けると、その様子を見ていたチャンはチョンヤウの後を追います。
チョンヤウが腕利きの武術家であることを知ったチャンは彼に弟子入りを志願しますが全く相手にしてもらえません。
しかしチャンは弟子入りを認めてもらうまでチョンヤウに付きまといます。

 

チョンヤウの弟分(陳會毅)はチョンヤウの義兄であるレイ(張翼)が身近に迫っていることを伝えにやって来ると、チョンヤウは妻のユイ(薰妮)を連れて自宅を去ります。
チョンヤウの自宅に残ったチャンのところにレイの手下たちが押し寄せますが、チャンは手下たちを追い払ってすぐにチョンヤウたちの後を追います。

 

チョンヤウたちは弟分のおじ(張景坡)の家に避難します。
実の兄弟ではないレイとチョンヤウの仲は決して良好なものとはいえず、素行が悪い義兄のレイはユイを手込めにしようとしたためチョンヤウはレイを見限り、ユイを連れて実家を離れます。
これを機にチョンヤウに対する憎悪が殺意に変わったレイは執拗にチョンヤウの命を狙っているのです。

 

チャンはしつこくチョンヤウに付きまとって弟子にしてもらおうとしますが、チョンヤウは頑なにチャンの申し出を拒みます。

 

チョンヤウの弟分は義父(張照)が危篤であることをチョンヤウに伝えます。
実家に戻ったチョンヤウは義父の最期に立ち会いますが、父親が亡くなってもレイとの不和が解消することはなく争いは続きます。
チョンヤウはレイの手下に襲われ、争いに巻き込まれたチョンヤウの弟分やユイの兄(陳龍)が命を落とします。
堪えかねたユイはチョンヤウを助けるために自らが犠牲になってレイの元に残る決断をするとレイはチョンヤウを逃がします。
しかしチョンヤウが去った後にユイは自ら命を絶ちます。

 

レイたちの様子を窺っていたチャンはユイの遺体を森に埋めようとしている手下たちを追い払ってユイの遺体を回収します。
チョンヤウとチャンはユイを埋葬し、ユイの死によってチョンヤウは糸が切れたように気を落としますが、チャンの根気に負けたチョンヤウはチャンの弟子入りを認めてカンフーを教えることにします。

 

稽古中に怪しい人の気配を感じたチャンはチョンヤウに耳打ちすると、なんとチャンはチョンヤウを刃物で刺します。
チャンはチョンヤウの遺体をレイに差し出すと、レイは監禁していたチャンの母親(葛萍)を解放します。
チャンの母親を誘拐して人質にしたレイはチャンを脅してチョンヤウ暗殺の依頼をしていたのです。

 

無事に母親が解放されると死んだはずのチョンヤウが目を覚まします。
チョンヤウは死んではおらず、チャンは弟子になった日にレイから暗殺の依頼を受けたことをチョンヤウに打ち明けると二人はひと芝居を打ってレイを欺こうとしたのです。
しかしチャンとチャンの母親は無残にもレイの手下に殺され、チョンヤウはレイが雇った殺し屋のトン(唐偉成)と戦います。

 

トンを倒して次々と襲ってくるレイの手下たちを追い払ったチョンヤウは義理の兄と一騎打ちとなります。
義理の兄に対する同情心が芽生えて一瞬ためらうチョンヤウですが、死闘の末にレイを倒します。

 

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楽しくないわけではないのですが、痛快なハチャメチャ感というよりは話が支離滅裂すぎてモヤモヤする(;'∀')

 

まず冒頭のシーンでチャン(洪金寶)がファンタン(鍾發)に挑戦するのですが、チャンはファンタンの正体を知らずに果たし状を出しているんですよね。
う~ん、果たし状って全く面識のない人に普通出すかなぁ?
そもそもチャンが果たし状を出すというのがよく分からない。
だってこの時すでに母親が誘拐されてレイに脅されている状態なのに果たし状なんて出している場合ではないと思うのですが(・・;)

 

ファンタンたちとのシーンは物語には直接関係ないのですが、チャンというキャラクターがどういう立ち位置なのか表現するのに取り入れてもいいシーンだとは思うので、ここはシンプルにファンタンたちが町でチャンにケンカを吹っ掛けるという展開でいいんじゃないかな。
ちなみにギャンブルに詳しい方ならご存じかと思いますが、鍾發さんの役名である「番攤(ファンタン)」って賭博ゲームのことなんですね。
この映画を観るまでファンタンを知らなかった(^^;)

 

レイ(張翼)がチャンを脅して殺しの依頼をするのも腑に落ちないんだよなぁ。
だってチョンヤウを確実に仕留めるならチョンヤウより弱いチャンなんて雇わないと思うし。
それに殺し屋(唐偉成)を雇うんだったらますますチャンに依頼する意味がないですし、そもそも義兄のレイは強いんだから殺し屋なんて雇わずに自ら手を下せばいいのに(^^;)

 

あと中盤で杜少明(トウ・シウミン)演じる殺し屋が登場するのですが、チョンヤウの暗殺を依頼された人物としてミスリードを狙ったのかな?
でも冒頭ですでにレイがチョンヤウの暗殺を依頼していたのがチャンだというのが体型でバレバレなんですよね(^^;)

 

終盤になるとサモが離脱してカーヤンさんが主役のような扱いになっていましたが、最後にサモが離脱したのはやっぱり納得できないですね。
原題の「身不由己(サンバッヤウゲイ)」は「思い通りにならない、不本意である、仕方がない」などという意味合いがあり、つまり劇中でチャンの母親が誘拐されて悪者に従うしかないというチャンのことを示しているので、やっぱり最後はサモが戦ってほしかったなぁ。

 

最後、実はチャンが生きていたというオチについて、このシーンのセリフは英語なのでおそらく海外版仕様かと思われます。
主人公が死ぬという展開は欧米受けが悪いらしく、検事Mr.ハーの海外仕様エンディングも主人公が死なないオチでしたよね。

 

本作は義理の兄との不和、妻をめぐる三角関係、母親を誘拐されて悪者に従うしかない主人公の葛藤などドラマティックな要素が満載なのでうまくいけば傑作になったかもしれないですが、カンフー映画ってそこまで綿密なシナリオにしなくてもいいと思うんですよね。
話が面白いに越したことはありませんが、そちらに比重を置きすぎて肝心のアクションが疎かになってしまっては元も子もないですし。
本作のような作品なら変にこだわって散らかってしまうよりかは単純明快な話のほうが楽しめるんじゃないかなぁ。

 

アクションに関しては大満足です(*'▽'*)
洪家班の方々、息が合っていて本当に素晴らしい動きです。
ところどころ元彪らしきダブルがちらり(*´з`)
張翼(チャン・イー)は右目に眼帯しながらのアクションなので、片目だと距離感を掴むのが難しそう。

 

銭湯で戦うシーンはきわどい(笑)
HD画質だったら見えちゃうかもしれない(´艸`*)キャー
前貼りをされているとは思いますが。
本作はブルーレイ版が存在しないからなぁ。
香港版のブルーレイも見たことがないのでリリースされていないのかな??

 

かつてテレビで放映された時の邦題は「燃えよデブゴン 地獄の危機一髪」だったそうなのですが、ここではVHS版の邦題である「斗え!デブゴン」と表記しました。
テレビでデブゴンが放映される時代が羨ましいのだ( ;∀;)