港片迷阿欣

大好きな香港映画の感想を書いているブログ(ネタバレあり)

少林寺秘棍房

少林寺秘棍房

原題 五郎八卦

製作 1984年

★★★★★

 

劉家良(ラウ・カーリョン)監督のカンフーアクション作品です。
共同ですが脚本、武術指導もカーリョンさんが務めています。

本日7月7日は傅聲(アレクサンダー・フー・シェン)の命日で、今年で40年が経ちます。
今回はフー・シェンの遺作の一つとなった「少林寺秘棍房(五郎八卦棍)」を取り上げてみようかと思います。

 

宋の時代。
槍法が優れたヨン家は朝廷に忠義を尽くし、「満門忠烈」と称されていましたが、ヨン家の活躍を妬んだポン将軍(克明)は遼国の王であるイエ(王龍威)と結託し、ヨン家を滅ぼそうと画策します。

 

裏切られたヨン家の兄弟たちは金沙灘の戦いで劣勢となり、長男のヤッロン(汪禹)が殺され、続けて三男のサムロン(麥德羅)、次男のイーロン(劉家榮)も命を落とします。
四男のセイロン(小侯)は捕虜となり、七男のチャロン(張展鵬)は父親のヨン・イップをかばって殺されます。
追いつめられたイップは自ら命を絶ち、残った兄弟は五男のンロン(劉家輝)と六男のロッロン(傅聲)の二人だけとなってしまいます。
兄弟たちを亡くしたロッロンは正気を失い、ロッロンから戦いの経緯を聞いた母親のセー太君(李麗麗)は嘆きます。

 

ポン将軍はンロンとロッロンがまだ生きていることを懸念しており、イエの側近であるクワイ(朱鐵和)は二人を取り逃がした番将(楊世鈞、石崗)を叱責します。
ポン将軍は逃亡したンロンを捕まえるために追手を放ちます。

 

金沙灘の戦いから逃れたンロンは小屋に辿り着き、置いてあった饅頭に手をつけると小屋に住んでいる猟師(劉家良)が戻って来ます。
ンロンは泥棒と勘違いされますが、猟師が敵ではないことが分かると勝手に小屋に入ったことを謝り、金沙灘の戦いでポン将軍の裏切りにあったことを猟師に告げます。
ンロンの話を聞いた猟師はかつてポン将軍の下で働いていたことを打ち明け、ンロンがイップの息子だと知った猟師はンロンに敬意を表します。

 

ンロンは猟師の力を借りようとしますが、猟師は大軍と戦うのは無理だと言います。
ほどなくして追手が小屋に現れたため、猟師はンロンを地下道に逃がして追手と戦います。
必死に抵抗する猟師は落石を起こして地下道を塞ぎます。

 

ポン将軍は兵を引き連れてヨン家の天波府に押し入り、生き残りの兄弟たちを引き渡すようにセー太君に詰め寄りますが、ポン将軍の陰謀を見抜いているセー太君は応じず、戻ったら朝廷へ連れて行くと約束してポン将軍を追い払います。

 

地下道から出て来たンロンが小屋に戻ると、猟師は落盤によって亡くなっていました。
ポン将軍を信頼している朝廷と掛け合っても埒が明かないと判断したンロンは仇討ちの機会をいったん見送ります。
ヨン家の象徴である槍の穂を折って棍に変えたンロンは出家の道を選び、五台山の清涼寺へやって来ます。
しかし清涼寺の住持(高飛)は仏心を持たないンロンの出家に反対し、寺から追い出そうとします。
反対されてもンロンは諦めず、自ら剃髪と戒疤を行います。

 

修行僧たちの修行の間である狼牙棒へやって来たンロンは木製の狼を攻撃して壊します。
チーホン大師(京柱)はンロンの行為を許さず、狼牙棒での修行は狼を殺生するためのものではなく、狼の牙を使えなくして追い払うことが目的だと説きます。

 

ンロンがヨン家の息子だと知ったチーホン大師は下山して天波府を訪れると、ンロンが清涼寺に潜伏していることをセー太君に伝えます。
しかしチーホン大師が天波府から去るとイエ軍団の一派に襲われます。
ンロンの居場所を教えるよう脅されますが、チーホン大師は口を割ることなく自ら命を絶ちます。

 

クワイはセー太君からンロンの居場所を聞き出そうと提案しますが、狡猾なポン将軍は朝廷に感づかれることを警戒し、ヨン家が動き出すのを待つべきだと言います。

 

国賊の汚名を着せられたンロンを連れ戻し、ポン将軍の悪事を暴くためにセー太君は行動を開始します。
セー太君は次女のカウムイ(楊菁菁)にロッロンの見守りを任せ、長女のバッムイ(惠英紅)に使いを命じます。
ポン将軍の兵たちによる監視下でバッムイはうまく天波府を抜け出しますが、イエたちはバッムイを尾行するためにあえて見逃したのです。

 

ンロンはチーホン大師の訃報を知ると、必ず仇討ちを成し遂げることを誓います。

 

旅館に到着したバッムイは旅館の給仕をしているイー(元德)が父親の金刀を持っていたため問い詰めると、イーがイップの家臣であることを知ります。
イーは金沙灘の戦いの後に金刀を持ち出し、旅館で身を潜めていると言います。

 

バッムイを尾行していたイエ軍団が旅館にやって来ると、旅館を占拠してンロンとバッムイが姿を現すのを待ちます。
バッムイは棺に隠れて旅館を脱出しようとしますが見つかり、捕まってしまいます。
抵抗したイーは重傷を負いますが、バッムイが身に着けていたヨン家の証である龍頭の杖の飾りを持ち出してンロンが潜伏する清涼寺へ向かいます。

 

イーは瀕死の状態で清涼寺に辿り着き、龍頭の杖の飾りをンロンに見せて状況を伝えるとンロンは下山を決意します。
住持はンロンの下山に反対しますがンロンの決意は固く、住持に匹敵する棍法を身に着けたンロンを送り出します。

 

ンロンは単身で旅館へ向かい、入口に居た番将を倒して旅館内へ突入するとイエ軍団が立ちはだかります。
高く積み上げた棺の中に隠れていたクワイに攻撃されるンロンですが、体勢を立て直してイエの手下たちと戦います。
ンロンは捕まっていたバッムイを救出すると、バッムイを背負いながら戦いますが、イエ軍団の猛攻に苦戦します。
そこへ住持と僧侶たちが旅館に現れてンロンに加勢します。

 

ンロンはバッムイと連携して棍でクワイを仕留めると、イエはポン将軍から金刀を奪ってンロンと対峙します。
ンロンとイエの一騎打ちとなりますが、ンロンは狼牙棒で会得した八卦棍を駆使してイエを追いつめ、バッムイはイエが落とした金刀を拾ってイエにとどめをさします。
恐れをなしたポン将軍は逃走を図りますが、ンロンは棍でポン将軍を仕留めます。
イエ軍団を倒して仇討ちを果たしたンロンは旅館から立ち去るのでした。

 

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本作は1981年に撮影が始まりますが、フー・シェンが撮影中の怪我で(本作とは別の作品)降板を余儀なくされます。
その後退院し、撮影再開に臨んでいた矢先に交通事故により帰らぬ人となってしまいます。
享年28歳。
ロッロン役を演じたフー・シェンが途中で姿を消し、バッムイ役の惠英紅(クララ・ワイ)が後半に活躍するのはこういった経緯があったからです。

 

とても可愛がっていたフー・シェンを突如失ったカーリョンさんはひどく落ち込み、映画を撮る気力を無くしてしまいます。
当初はフー・シェンの代役を立てる話も出たそうですが、代役を立てずに映画は完成しました。
私も代役を立てないでこれで良かったと思います。
途中で脚本が変わるというのは大変ですが、これが演者やスタッフたちのフー・シェンに対する敬意だったのではないかと思います。
ンロンが仇討ちを成し遂げた後に兄弟たちが回想で登場するシーンがあるのですが、一番最後にフー・シェンが登場した時には目頭が熱くなりました(:_;)

 

フー・シェンの実弟の張展鵬(デビッド・チャン)が七男のチャロン役で出演されています。
カタカナで名前を書くと姜大衛と同じだね(・∀・) 発音は違うけど。
ちなみに姜大衛(デビッド・チャン)の「姜」という字は北京語読みだと「チャン」ですが、広東語読みだと「キョン」です。
フー・シェンが事故にあった時に車を運転していたのは張展鵬で、幸いにも張展鵬は命を取り留めます。
フー・シェンの事故が無ければ、もっと映画界で活躍されていたかもしれませんね。

 

本作はドラマ、映画、舞台化もされている人気が高い歴史小説「楊家将」を題材にしています。
私は映画を観るまでほとんど知らなかったけど(^^;)
楊業は実在した将軍で、本作では楊業ではなく息子たちの活躍を描いた作品となっております。
ジェット・リー主演の「SPIRIT」の監督である于仁泰(ロニー・ユー)も楊家将を題材にした作品を撮られています。

 

邦題は「少林寺秘棍房」ですが、今回劉家輝(ラウ・カーファイ)演じるンロンが修行をするのは五台山の清涼寺です。
劉家輝だと邦題が少林寺になっちゃうあるある(笑)
自分で剃髪するから頭が血だらけになって怖ぇ(゚Д゚;)
そんでもって自ら頭に線香を押しつけて戒疤(焼印)をするのですが、痛みや熱さを恐れない復讐心がすごい。
この剃髪のシーンはフー・シェンが亡くなった後に撮影されたそうなのですが、輝哥のあの気迫に満ちた表情は演技ではなかったんですね。

 

輝哥はインタビューでフー・シェンのことを明るく楽天家で少年のような人だと仰っていましたが、あの愛らしい表情を見てると納得。
きっとムードメーカーだったんだろうなぁ(*‘∀‘)

 

カーリョンさんの作品はアクションレベルが非常に高くて見応えがありますが、ただアクションが凄いだけではなく表現方法や演出が本当に面白いんですよね(*‘∀‘)
敵の口に棍を噛ませて歯を取っちゃうシーンなんてインパクト強すぎ(笑)
劇中では狼を殺さずに狼の牙を使えなくすることで殺生するなく狼を追い払うという教えが登場しますが、これはカーリョンさんの武徳そのもので、暴力は暴力では解決せず、復讐はさらなる復讐を生むだけで、武術とは争いを止めるものであると。
カンフーのレベルの高さだけではなく、こういった哲学的な要素もカーリョンさんの作品の魅力なんですよね(*^-^*)

 

元德さんは若くてキラキラしてたなぁ(*'▽')
そして動きがキレッキレ!!
カンフースタントマン(龍虎武師)を観た時に元德さんがお年を召してますます良い男になってた(*´▽`*)イケおじ♪

 

気になったのは、京柱さん演じる大師の名前が智空(チーホン)だったり智宏(チーワン)だったりするのは何でなんだろう??
ここでは初登場時にクレジットされていた智空(チーホン)で記載しました。

 

父親のヨン・イップ役を演じたのが誰だか分からなかったなぁ。
分かる方がいたら教えてください(^^;)

 

本作は広東語音声ですとラウ・カーファイご本人の声でお楽しみ頂けます♪