港片迷阿欣

大好きな香港映画の感想を書いているブログ(ネタバレあり)

漆黒 ノワール

漆黒 ノワール

原題 公僕

製作 1984年

めぐちゃんの満足度 ★★★★★

 

李修賢(ダニー・リー)が監督・脚本・主演を務めたポリスアクション作品です。

 

警察官のビー(李修賢)は高齢の母親(歐陽莎菲)と二人で暮らしており、凶悪事件に取り組むビーの身を案じる母親は毎日息子の無事を祈っています。

 

新人警察官のギッ(艾廸)は観塘区の警察署に捜査員として派遣されますが、昇進試験に響くことを懸念したギッは上官(蘇杏璇)に辞退を申し出ると、上官は試験の勉強時間を調整するようにギッを説得します。

 

巧明街の路上でハク(黃伯文)派とファン(左頌昇)派のショバ争いが勃発し、就任早々乱闘の鎮静化に駆り出されたギッはグループの一部の男たちを逮捕します。
乱闘現場から逃走したハクとファンは一触即発状態となりますが、ビーが現れたことですっかり気後れしたハクとファンは和解します。
幼少期からビーの顔なじみであるハクは逮捕された仲間の解放をビーに求めます。

 

ギッは逮捕したグループの男たちの調書を取ろうとしますが、男たちは互いに主張をぶつけ合うばかりで埒が明きません。
そこへビーが現れてギッと初めて顔を会わせると、ビーの上司であるチョン(金興賢)はギッの力になるようビーに頼みます。
ビーの高圧的な取り調べに怯んだ男たちは大人しく言う通りに従います。

 

チョンは捜査員たちを集めて捜査会議を開き、違法賭博店の検挙に乗り出します。
チョンとビーのチームは二手に分かれ、新人のギッはビーと共に行動することになります。
違法賭博店に到着したビーはギッを連れてビルの配管をよじ登り、裏口から店へ突入します。
チョンの部隊は入口から突入し、挟み撃ちにして違法賭博店にいた店員と客を逮捕します。
店にはビーの情報屋であるセン(太保)がいましたが、ビーはセンを店から逃がします。
生真面目なギッはビーが違法賭博に関わっていたセンを逃がしたことに疑念を抱きますが、ビーはセンを泳がせて黒幕を炙り出そうとしているのです。

 

工場に勤めるガンマニアの男(梁鴻華)が改造銃を不法所持しているという情報をセンから手に入れたビーは男を連行します。
ガンマニアの男は否認の一点張りで事態が進展しないと思ったビーは男を挑発してわざと自分の銃を手に取らせます。
ビーはガンマニアの男に暴行されたと嘘をつき、部屋に次々と捜査員たちが押し寄せると、根負けした男は銃の不法所持容疑を認めます。

 

麻薬中毒のセンは麻薬を買うためにファンから多額の借金をしていますが、返済を滞るセンに痺れを切らしたファンはセンに強盗の片棒を担がせようとしています。
センが断るとファンは仲間のソー(成奎安)と共にセンを暴行して去って行きます。

 

その後センはハクに頼んで麻薬を買いますが、麻薬による中毒症状を引き起こして失神し、麻薬を売ったハクと失神したセンは警察署で取り調べを受けます。
ハクは麻薬を売ったことを口外しないようにセンに釘を刺していたのでセンは麻薬の購入ルートを供述しませんでしたが、ビーはハクが麻薬に関わっていることを見抜いています。

 

就任当初はビーの非常識な捜査活動に不満を抱いていたギッですが、実直一辺倒だけでは凶悪犯に太刀打ちできないことを学び、ビーの仕事ぶりに一目を置きます。

 

近いうちにガソリンスタンドへ強盗が押し入るという情報をセンから入手したビーは捜査員たちを集めてガソリンスタンドで張り込みます。
しかし強盗は姿を見せず、ギッは夜間の張り込み捜査で睡眠不足になりながら昇進試験に臨みます。

 

センの情報を信じて強盗が現れるのを根気強く待ち続けていると、ついに強盗たち(沈火新、黎強權、張華)が姿を現します。
強盗の一人がガソリンを巻いてライターで引火させようとしたため、ビーは瞬時に強盗の一人に向けて発砲します。
ビーは待機していたギッと協力して強盗たちを逮捕し、功績を讃えられて表彰されます。

 

ビーはギッと彼女(莊靜而)を自宅に招いて表彰の祝杯をあげていると、外が騒がしいことに気づいたビーとギッは様子を見に行きます。
多くの住民たちが一人の男を取り囲んでおり、男が少女にわいせつ行為をしたという話を聞いたビーは激高して男に殴りかかります。
ギッは怒りが収まらないビーを制止し、ビーは被害に遭った少女を病院へ連れて行きます。

 

麻薬中毒のセンはついにハクから麻薬を盗むようになりますが、これに腹を立てたハクは仲間とともにセンを追いつめて暴行を加えます。
偶然通りかかったビーが暴行されたセンを発見すると、センはハクが麻薬の販売を行っていることをビーに告げます。

 

センがビーと会話している様子を目撃したソーとローは仲間のファンに報告し、センが警察官に情報を流していたことを知ったファンは激怒します。
ソーがセンに暴行を加えるとセンは死んでしまい、焦ったファンたちはセンの遺体を側溝に投げ入れます。

 

翌日センの遺体が発見されたという連絡を受けたビーは側溝へ向かい、遺体がセンであることを確認します。
ハクがセンを殺害したのではないかとにらんだビーはギッと共にハクを捜します。

 

ギッはセンを殺した容疑でハクに手錠をかけると、ハクはギッを振り払って逃走します。
ギッは必死でハクを追いかけますが、ハクは露店に置いてあった刃物を手に取ってギッの顔を切りつけて再び逃走します。
負傷したギッに代わってビーがハクの後を追い、ビーはハクに向けて発砲しますが、ビーは誤って自転車で飛び出してきた幼い子供を撃ってしまいます。

 

ビーに撃たれた子供は亡くなり、ビーは停職処分となります。
ビーの母親はアパートの隣人のチュウ(余慕蓮)からビーが誤射によって停職処分になったことを聞いて落胆します。

 

ビーは亡くなった子供の葬式に足を運びますが、子供の両親から非難されたビーは葬儀場を追い出されます。
その後ビーは姿を消し、ギッは街中を捜し回ってビーを発見します。
ギッは誤射の件について上司のチョンが弁護士を立ててくれるとビーに伝えますが、すっかり意気消沈しているビーは提案を断ります。
ギッは起きたことは取り返しがつかないと言い、警察官としての職務を果たすべきだと必死にビーを説得すると、ビーは再びやる気を取り戻します。

 

ファンは強盗計画を企てており、ハクと手を組みます。
センの麻薬仲間のクワ(徐建華)からファンの居場所を聞き出したビーとギッはアジトに乗り込みますがすでにハクとファンの姿はなく、ファンの仲間から強盗の計画があることを聞き出します。

 

ハクたちは現金輸送車を襲撃して現金の入ったケースを奪います。
ビーとギッは現金のケースを持って逃走するハクたちを負い、ビーはソーとファンをバットで殴ります。
ハクは現金の入ったケースでビーを殴り倒してなおも逃走を図ります。

 

ギッは駐車場に逃げ込んだハクに銃口を向けますが近くに子供たちがいたため発砲できず、この隙にハクは持っていた銃でギッを撃ちます。
ビーは撃たれたギッに駆け寄ると、ギッは昇進試験に合格したことをビーに告げて息を引き取ります。
ビーはハクの脚を撃って動きを止め、その場で逮捕します。

 

ビーが子供に誤射した件は捜査中の事故として罪には問われませんでしたが、ビーはたとえ無罪でも罪のない子供を殺してしまったことに変わりはないと事実を受け止め、復職を見送るのでした。

 

私はかなり気に入っている作品で、李Sir主演の作品でベスト5には確実に入ります(*‘ω‘ *)
ポリスアクションといってもジャッキーやドニー様のような最強刑事が暴れまわるようなぶっ飛んだ作品ではなく、警察官が凶悪犯罪撲滅に取り組む様子を描いた警察ドラマ作品です。
本作は日本版のDVDやブルーレイが存在せず、VHS版は存在するんですけど超希少で入手困難。
そもそもうちにビデオデッキが無い(^^;)
なので私は香港版で観ました。

 

若き李Sirが超イケメンだわ~(*´Д`*) 
もちろん顔だけではなく、李Sir演じるビーという警察官の魅力が存分に引き出されています。
第4回香港電影金像奨の最優秀主演男優賞と第21回金馬奨の最優秀主演男優賞を受賞されていますが納得。
「ダニー・リー=警察官」というイメージを強く印象づける作品ではないでしょうか(*‘∀‘)
一言で警察官役といっても作品によって演じる警察官像は当然異なるわけですが、本作の警察官は喋血雙雄に匹敵するぐらい私は好きかな。

 

太保は情報屋の役が本当に上手で物凄くマッチしています(^ω^)
ちなみに太保ちゃんは香港電影金像奨の最優秀助演男優賞にノミネートされていました。
非常にかわいそうな役なんですけどね( ;∀;)
違法賭博店から去る時になぜか日本語で「さよなら!」って言っていました。
なぜ日本語???
※吹き替えなので太保ちゃんの声ではありませんが。
太保ちゃんの役名である「道友成(ドウヤウセン)」とは「麻薬中毒者のセン」という意味で、「道友」は「麻薬中毒者」という意味です。
漢字からはなかなか想像できない意味ですよね(^^;)

 

新米捜査員ギッ役の艾廸(エディ・チャン)は李Sirとあんまり年齢が変わらないのに良い具合に先輩後輩感があってGood♪
最初はビーの粗暴なやり方に納得できなくて反発するんですけど、徐々にビーの仕事の向き合い方に一目を置くようになって、ビーが停職になって落ち込んだ時なんか逆に後輩が先輩を奮起させる成長ぶり(´ω`)
でも最後は…うぅ(T_T)

 

ハクやファンは組織的な犯罪グループである「黑社會」とは違って、日本語でチンピラや不良を意味する「古惑仔」といった感じですが、やっていることは悪質でえぐいです。
ビーがチンピラを取り調べるシーンでは超高圧的でどっちがチンピラか分からん勢いですが、あれぐらい強気な態度でいかないと綺麗事だけじゃやっていけないですよね。
ナメられたら収拾がつかないですし。
ただ強行的な捜査というのは代償もあって、本作では無関係の子供を死なせてしまうというシーンが大変ショッキングでした。
市民の安全を守るために働いているのに、市民の命を奪うことになってしまうというやるせなさ。
人の命を重んじているビー刑事は犯罪者を逮捕するためなら多少の犠牲はやむを得ないと割り切れる性格ではないので葛藤する様子はつらいけど、ビー刑事が血の通った警察官で良かったと思います。