港片迷阿欣

大好きな香港映画の感想を書いているブログ(ネタバレあり)

フィスト・オブ・レジェンド 怒りの鉄拳

フィスト・オブ・レジェンド 怒りの鉄拳

原題 精武英雄

製作 1994年

★★★★

 

陳嘉上(ゴードン・チャン)監督、李連杰リー・リンチェイ)主演のカンフーアクション作品です。
精武門といえばブルース・リーから始まり、ジャッキー版、ドニー様版をレビューしましたが、今回はリンチェイ版の精武門を取り上げてみたいと思います(^-^)

 

二十世紀初頭、精武館の門下生であるチェン(李連杰)は日本の学校に留学していますが、黒龍会の門下生たちは中国人のチェンが日本の学校に通っていることが気に入らず、チェンを追い出そうと学校に押しかけますが返り討ちに遭います。
黒龍会の指導者の船越(倉田保昭)が駆けつけると騒ぎを制止して門下生たちを叱責します。
チェンが精武館の門下生だと知った船越は精武館のフォ師匠が試合中に亡くなったことを伝えるとチェンは動揺し、すぐに上海へ戻ります。

 

フォの友人のノン(秦沛)は留学中のチェンに心配をかけないようにあえてフォ師匠の死をチェンに連絡していませんでした。
フォ師匠と戦った相手が虹口道場の芥川(樓學賢)だと知ったチェンは虹口道場へ乗り込みます。
チェンは立ちはだかる虹口道場の門下生たちを次々と退け、大差で芥川を倒します。
しかし芥川と戦ったチェンはフォ師匠が負けたことに疑念を抱き、フォ師匠の墓を掘り起こして死因を確かめようとします。
検死の結果フォ師匠が毒殺されたことが判明すると、ノンは料理長のガン(黃新)を疑います。

 

フォの息子のティンアン(錢小豪)は精武館の館長を務めていますが、精武館に戻ったチェンが弟弟子たちの指導を行うようになると、手が空いたティンアンの胸中は穏やかではありません。

 

フォの毒殺を企てたのは中国武術を脅威に感じていた日本軍の藤田長官(周比利)で、正々堂々と戦うつもりだった芥川は藤田に毒殺の件を抗議すると、芥川は藤田に殺されます。
藤田は芥川の殺人をチェンの犯行に偽装することを画策し、芥川の遺体を虹口道場へ送ると腹を立てた虹口道場の門下生たちは精武館へ押しかけます。
精武館が乱闘騒ぎになると警察が駆けつけ、チェンが戻って来ると警察官のチエ(袁祥仁)はチェンを逮捕します。

 

裁判が開かれると船越の姪の光子(中山忍)がチェンの証人として出廷し、チェンの無罪が証明されます。
日本でチェンの学友だった光子はチェンの帰りを待ちきれずに日本から上海へやって来ましたが、ノンや門下生たちは日本人である光子を精武館に置くことを反対します。

 

チェンが戻って来たことにより館長としての立場が蔑ろになったと感じていたティンアンは悶々とした気持ちを晴らすためにチェンに勝負を挑みます。
ティンアンは自分が負けた時はチェンに館長の座を明け渡すことを約束します。
チェンが勝負を制しますが、館長になるつもりがないチェンは光子を連れて精武館を出て行きます。

 

藤田に買収された精武館の門下生シャン(林剛)は毒殺の片棒を担がされ、料理長のガンは罪を犯して拘束されている息子を助けるためにやむを得ずフォの乾物に毒を仕込んでフォを毒殺していました。
シャンは口封じのためにガンを自殺に見せかけて殺害します。
厨房から乾物が発見されたことでノンはガンが毒を仕込んだことを確信します。

 

藤田はティンアンを倒すために精武館に挑戦状を出します。
しかしティンアンが不在のため、弟弟子たちは急いで捜します。
ティンアンが娼館にいることを知ったノンたちは決闘を申し込まれたことを伝えに娼館へ出向くと、ティンアンは精武館の名誉を守るために戦う覚悟を決めます。
ティンアンは贔屓にしていた娼婦のシャオホン(蔡少芬)を身請けして精武館へ連れて行くことにします。

 

藤田は精武館を潰すために戦いを挑もうとしていますが、正々堂々と手合わせをしたい船越は単独でチェンの元を訪れます。
チェンと船越の一進一退の攻防が続き、強風で船越の視界が悪くなるとチェンは互いに目隠しで戦うことを提案します。
布で目を覆った二人の激しい勝負が続き、最後は互いの武術を称え合います。
チェンは相手を倒すために武術に邁進していますが、武術とは己自身を鍛えるためだと船越はチェンに諭します。
船越は残忍な藤田に用心するようチェンに警告して去って行きます。

 

鍛錬を積んだティンアンはチェンの元を訪れ、習得した迷踪拳をチェンに教えます。
ティンアンは日本人との戦いに敗れた時は迷踪拳を継いで欲しいとチェンに頼みます。
チェンと一緒に暮らしていた光子はチェンの邪魔になってはいけないと日本へ帰国することにします。

 

決闘の日、チェンは藤田と戦うティンアンに同行します。
藤田は戦う前にシャンを呼び出し、フォ毒殺の真相をチェンたちに暴露した直後に用済みになったシャンを殺害します。
藤田に攻撃を仕掛けるティンアンですがとても敵わず、たまらずチェンが戦いに闖入します。
しかしさすがのチェンも藤田の猛攻に押されて苦戦を強いられます。

 

チェンは打ちのめされても起き上がり、徐々に反撃を開始します。
劣勢となった藤田は日本刀を持ち出して背後からチェンを襲おうとすると、チェンをかばったティンアンが腕を刺されます。
チェンは藤田の日本刀にベルトで対抗し、チェンのベルトが藤田の日本刀を捕らえるとすかさず藤田の首を切り裂きます。

 

道場に日本領事(高橋利道)と日本兵、さらには警察と精武館の門下生たちも駆けつけます。
日本領事は日本兵を撤退させますが、長官の殺人容疑でチェンを政府に引き渡さなければいけないと告げます。
チェンは死を厭わず自首を申し出ますが、精武館の門下生たちはチェンの替え玉を使い、死刑を免れたチェンは上海を脱出するのでした。

 

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カンフー映画が下火になっていた時期も重なり、本作は当時あまりヒットしなかったそうです。
でも改めて観てみるともっと評価されてもいい作品だと思うんだけどなぁ( ;∀;)

 

本作はリンチェイの映画会社「正東製作(イースタン・プロダクション)」が製作した最後の作品です。
※「冒険王」は「中國星(当時の永盛娯楽)」との合作です。
90年代前半のリンチェイは激務で、フィルモグラフィーを見てみると引っ切り無しに映画に出演されていたことが分かります。
演者だけではなく製作にも携わっていたのですが、過労や興行的に満足のいく結果が得られなかったなどの理由で製作から撤退したといわれています。
中南海保鑣」や「給爸爸的信」とか自分的にはかなり気に入っているのに(-з-)

 

リンチェイの学ラン姿に萌え(*´ω`*)
アクションも美しくて惚れ惚れします。
そういえばリンチェイは陳真と霍元甲の両方を演じているんですよね。
以前レビューしましたがSPIRITでリンチェイが演じる霍元甲も良かったなぁ(*^^*)

 

倉田様は本作でリンチェイと初共演です(*'▽')
広東語の台詞は吹き替えですが、日本語の台詞は倉田保昭氏ご本人の声です。
倉田様といえばユエン・ウーピン監督の「激突!キング・オブ・カンフー」に霍元甲の家庭教師の江厚山役で出演されていてこちらも面白い作品なのですが、日本だとVHS版か非正規DVD版しかないのが残念。

 

谷垣さんが虹口道場の門下生役で出演されています。
当然お若いのですが、谷垣さんってお年を召しても若々しいというか、今とそんなに変わらない感じがします。
アクション監督をされている方たちってエネルギッシュで若い方が多いですよね。
ウーピンさんもパワフルですし('◇')

 

中山忍が超絶可愛い!!
当初ヒロインは内田有紀になるという話もあったらしいです。
谷垣さん著書の「香港電影 燃えよ!!スタントマン」に精武英雄の裏話などが綴られていて大変興味深く面白いです(^-^)

 

フォの息子役のチン・シウホウ、黒龍会トップ役の倉田保昭、日本軍役のビリー・チョウとアクションは存分に楽しめます。
チェンが弟弟子にキックのお手本を見せるドラゴンへの道を彷彿とさせるシーン、船越と戦う時に「物は反撃しない」という燃えよドラゴンを彷彿とさせるシーン、チェンのシャドーなど、ブルース・リーのオマージュを感じさせる演出が嬉しい(*^^*)
あと個人的にはシウホウがミラクルでジャッキーがやっていたような二段蹴りをするのがかっこよくて好きですね(*'ω'*)
終盤でリンチェイのダブルやってるの黃凱森(ウォン・ホイサム)かな??

 

ストーリーに関しても概ね楽しめたのですが、ひとつ気になることがあります。
それは途中でチェンの復讐心が影を潜めてしまうという点です。
ブルース・リー版のチェンは師匠を殺した犯人を何としてでも見つけて復讐するという強い意志がありましたが、今回のリンチェイ版では復讐心が途絶えてしまうのがちょっと肩透かしを食った感じがします。
劇中でチェンは殺人の濡れ衣を着せられて裁判となり、光子に救われたことで彼女に恩があるというのも分かるのですが、当初チェンはフォ師匠の遺体を掘り起こしてでも暗殺した犯人を捜そうとしていたので、途中で精武館を出て光子と暮らしているのがちょっと腑に落ちなかったかな。

 

リンチェイ版の精武門は全ての日本人を悪く描いていないのもブルース・リー版と異なります。
船越は武徳を重んじる武術家ですし、芥川も卑劣な性格ではありません。
光子は分け隔てなく周囲に優しく接していますし、抗日要素は比較的マイルドな描かれ方をしています。

 

VHS版の邦題には「怒りの鉄拳」という副題がついているのですが、近年のDVD版には副題はついていません。
しかも意外なことに本作は日本劇場未公開だったらしいです。
主要キャストが日本人なのに日本の劇場で公開されないって…(^^;)