港片迷阿欣

大好きな香港映画の感想を書いているブログ(ネタバレあり)

極道香港 復讐の狼

極道香港 復讐の狼

原題 殺出香港

製作 1988年

★★☆☆☆

 

ショウブラザーズ時代に主に悪役として活躍した武打明星、王龍威(ワン・ロンウェイ)監督によるクライムアクション作品です。

 

定年間近の巡査部長マック(柯俊雄)率いる警察捜査班は宝石強盗を追跡中に女性の遺体を発見します。

 

ホン(狄威)の妹のリン(徐婉薇)はギッ(盧惠光)と結婚して香港で暮らしていますが長いこと音信不通になっており、不審に思ったホンはリンを捜すため観光ツアーを利用して中国本土から香港へ入境します。

 

遺体の女性は山本組の高倉(王駿)に殺害された娼婦で、女性を斡旋した議員のチョー(楚原)は裏で売春クラブを経営し、犯罪行為に手を染めています。
チョーは腹心のギッに代金の徴収を命じます。
日本人と商売をしているチョーは関係悪化を避けるため、できるだけ穏便に済ませるように念を押します。

 

傲慢な高倉は代金を踏み倒そうとしたため、ギッは高倉の組と争いになります。
代金を回収できないと判断したギッはやむをえず高倉を海に沈めます。
妻のリンはギッが犯罪に手を染めていることに罪悪感をもちますが、ギッは二人の将来のためにまとまった資金が必要だとリンを説得します。

 

リンが見つからず途方に暮れて路上で寝ていたホンは不審者扱いをされて警察官に捕まります。
幸いツアーガイドのイエン(劉嘉玲)のおかげでホンの疑いは晴れます。
考え込むホンの様子を見て観光目的ではないと感づいたイエンはホンから行方不明になっている妹を捜していることを聞き出すと、叔父の警察官に相談することを提案します。

 

マックの捜査班は女性の遺体に入れ墨があったことや麻薬が検出されたことを鑑みて被害者は風俗業を生業にしていた可能性が高いとにらみ、繁華街で聞き込みを行うことにします。
イエンはホンを警察署に連れて行き、イエンの叔父のマックに事情を説明してホンの力になってほしいと訴えますが捜査が多忙である上、中国人に偏見があるマックは全く取り合ってくれません。
警察に頼ることを諦めたホンは繁華街でリンを捜すことにします。

 

マックと部下のヤウ(邱國强)は高級クラブにいたホンを発見するとしばらく様子を窺うことにします。
酔った客がホステスに暴力を振るう様子を見て耐えかねたホンは客の手を掴んでホステスを助けます。
逆恨みした客の仲間に襲われますが、軍人の訓練経験があるホンは次々と男たちを倒します。


着飾ったリンがクラブに姿を現し、リンに気づいたホンは駆け寄ろうとしますが一緒にいたギッはリンを車に乗せて逃走します。
ホンはバイクを奪って車で逃走する二人を追います。
ギッはバイクで食らいつくホンを振り払うと、乱暴なギッの仕打ちに不信感を抱いたリンは車を降りますが、ギッはリンを気絶させて現場を後にします。

 

マックとヤウがホンの前に姿を現すとホンは行方不明の妹を追っていたと釈明します。
ホンは二人の写真をマックたちに見せると写真を見たヤウはギッと面識があり、彼は警察官でありながら裏社会と関わりがあったと言及します。
マックは危険な行動を起こしかねないホンを警察署へ連れて行くことにします。

 

チョーは選挙を控えているため揉め事を起こさないようギッに忠告します。

 

ギッが薬物と売春に関わっていることを突き止めた警察は身柄確保に向けて行動を開始します。
ホンは同行を断られると単独で捜査班の後を追います。

 

チョーの邸宅に到着した捜査班は門を突破して強制捜査を行います。
捜査が行われる前にギッは仲間と共に軟禁していた女性たちを邸宅から連れ出そうとしますが、ホンがギッたちの前に立ちはだかります。
ギッと仲間は逃げ出し、ホンはリンを救出します。

 

兄の反対を押し切って香港にやって来たリンは自らの過ちを認めてホンに謝ります。
香港での華やかな暮らしに憧れていたリンですが、改心して中国へ戻る決断をします。
しかしリンはチョーの事件の証人として出廷する必要があり、警察は裁判の日までリンを身辺警護します。

 

裁判で犯罪が立証されれば議員の職を失ってしまうのでチョーはリンの殺害をギッに命じます。
リンはイエンのマンションで保護されていますが、元特殊部隊の警察官だったギッは外壁をよじ登り、窓からイエンの部屋に侵入してリンを殺害します。
イエンは逃走するギッと鉢合わせし、イエンの悲鳴を聞いた護衛中の捜査員たちは彼女を救出します。

 

リンの死を知ったホンは姿を消し、マックはリンを守れなかったことを悔みます。
証人不在で閉廷し、チョーの護衛を命じられたマックたちは憤ります。
復讐を誓ったホンはチョーの前に現れると強引に車へ乗り込みます。
ホンに脅されたチョーはギッが潜伏しているビル建設現場まで車を走らせます。

 

弟分からホンの到着の知らせを聞いたギッは武装して徹底抗戦の構えです。
マックたちもビル建設現場に到着し、特殊部隊も出動します。
ギッがホンの前に姿を現すと、ギッはホンが盾にしていたチョーを銃で殺害して逃走します。
ヤウはギッの銃弾に倒れ、マックも脚を撃たれて負傷します。
ホンはギッに復讐することを訴えると、マックはホンの訴えを退けながらも目を瞑ります。

 

ホンは逃走するギッを追いつめて二人はもみ合いとなり、ホンはギッに鉄槌を下して妹を殺された復讐を果たすのでした。

 

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狄威(ディック・ウェイ)が主演の作品ってめずらしい(・∀・)
しかも本作は善人役です。
でもショウブラ時代のディック・ウェイは善人役も演じていたんですよね。
ユン・ピョウ inドラ息子カンフーあたりから悪役の才能が開花して、プロジェクトAの海賊役で悪役の地位を確固たるものにします。
そんなディック・ウェイが主演で善人役なら絶対観なければ!!と思って観たのですが、う~ん期待外れ(-_-;)

 

残念なのがアクション。
監督がショウブラの武打明星の王龍威(ワン・ロンウェイ)で武術指導も兼任されていて、悪役のカリスマ狄威(ディック・ウェイ)と酔拳2のラスボス盧惠光(ロー・ワイコン)の戦いだったら期待するじゃないですか!!
それがあんな二人の良さを全く活かしていないアクションシーンになるなんてガッカリです(T_T)
時間も短いし…。
作品の雰囲気に合わせたアクション演出だったのでしょうか。
確かに本作はシリアスなクライム作品なので、その中でアクションシーンだけが華々しい演出ですと乖離が生じるかとは思います。
でも私はディック・ウェイとロー・ワイコンをキャスティングした時点でアクションに特化した作りにしたほうが良かったと思います。
本作は脚本や演出が特化していたり型破りな作品とかではないので、アクションを売りにしないと平凡な作りになってしまうんですよね。
いっそのこと香港映画らしくぶっ飛んだ作風にしたほうが面白くなったかもしれない。

 

シリアスなクライム作品だと前述しましたが、色々とツッコミどころがあるんですよね(^^;)
冒頭でヤクザの高倉が性行為中に娼婦を薬漬けにして死なせてしまうというシーンがあるのですが、女が死んだ後に高倉が動揺しているのが不可解。
高倉自身も麻薬常用者なので、薬で人が死ぬ可能性があることぐらい承知していると思うので女が死んであんなに動揺するかなぁ?
そこは顔色一つ変えずに「チッ、死んじまったか」ぐらいのほうが傲慢で残虐な高倉のキャラクターが表現できると思うけどなぁ。

 

中国から来ていたバスツアーの客が広東語を話しているのも気になる。
ちなみに劇中で中国から来た人に対して「阿燦(アチャン)」という呼称が使われていますが、これは香港の人が中国から移住して来た人を蔑む呼び方なので実際には使わないほうがいいです。

 

チョー議員が演説する会館の入口でギッが門番に止められるシーンがあるのですが、議員に会いたいと言われただけで素性の知れない人をすんなり通しちゃダメでしょ!!
そもそも入口にいた門番はおそらくチョーの舎弟なので、舎弟がチョーの腹心であるギッと面識がないというのは不自然だなぁ。

 

最後ホンがイエン宛てに書いた手紙の内容についてですが、今回ホンが実際に香港を訪れたことで繁栄と豊かさを象徴する香港に対する偏見が無くなったみたいなことを言っていましたが、議員と元警察官が裏で麻薬所持と売春の斡旋、挙句の果てに妹が殺されるという大事件を目の当りにしたらますます香港に対する嫌悪感が強くなると思うのですが(;゚Д゚)

 

狄威が訓練をしている回想シーンで右腕にアームバンドを巻いていたのですが、あれってタトゥー隠しかな?
狄威って右腕に入れ墨していますよね。
メイクでも隠せそうですが、バンド巻いたほうが簡単だからかな?

 

ホンが観覧車から落ちそうになっている子供を助けに支柱を登っていくシーンは大福星のジャッキーを思い出す( ̄▽ ̄)
このスタントすごいですよね(;゚Д゚)

 

沈威さんの凶行シーンはホラーだったなぁ((((;゚Д゚))))

 

楚原さんの証人のくだりはポリス・ストーリーと同じ流れ(;^_^A
今回は証人が殺されてしまうんですけどね。
あと冒頭の宝石強盗がバスで逃走するシーンもポリス・ストーリーっぽいね。

 

柯俊雄(オー・チョンホン)は悪役も良いけど警察官役も素晴らしいです!
定年間近のベテラン警察官を思わせる仕草が巧みで大変好演でした。
警察官としてホンの私刑を止めるべきか、感情に従って行かせるべきか、悩ましいね。

 

不満な点ばかり指摘してしまいましたが、決してつまらない作品というわけではありません。
80年代の作品で悪役ではないディック・ウェイは希少ですし、彼のファンなら一見の価値ありです(^-^)
ただバイオレンスなシーンもあるので苦手な方はご注意ください。