港片迷阿欣

大好きな香港映画の感想を書いているブログ(ネタバレあり)

炎の大捜査線

炎の大捜査線

原題 火燒島

製作 1990年

★★★☆☆

 

「ドラゴン特攻隊(迷你特攻隊)」に続く王羽(ジミー・ウォング)がジャッキーを(無理矢理)出演させた朱延平(チュー・イェンピン)監督のアクション作品です。
ファンの間では周知の事だとは思いますが、経緯について知りたい方はドラゴン特攻隊をご覧ください。

 

ソン警部(曹健)は海外演習から帰国したワイ(梁家輝)に捜査協力を求めます。
警察内部の人間が犯罪に関与している可能性があり、ワイは先輩のミウ(張國柱)と捜査を行うことになりますが、ソン警部は何者かに殺害されます。
ソン警部を殺害した犯人は車で逃走を図りますが、車に仕掛けられていた爆弾によって犯人は命を落とします。


殺人現場には人の指が残されており、その指はすでに死刑が執行された死刑囚ワーの物であると明らかになります。
不可解な事態に困惑しつつも刑務所内が怪しいと睨んだワイは刑務所に潜入するために暴行事件を起こします。

 

受刑者のチュー(庹宗華)と相部屋になったワイは気の良い彼とすぐに打ち解けますが、収監されたばかりの新入りは豪腕のアニキ(楊雄)と一戦交えなければならない掟があります。
アニキに痛めつけられたワイは早くも刑務所の洗礼を受けることになります。

 

受刑者のサイギ(洪金寶)は誕生日を迎える息子(陳彥儒)に会いに行くために脱獄を図ります。
息子と再会したサイギは束の間の親子の時間を過ごしますが、すぐに身柄を拘束されて刑務所に連れ戻されます。

 

ビリヤードプロのロン(成龍)はマフィアのボス(鐵孟秋)から試合の八百長を持ちかけられますが、ロンは八百長には応じずに試合を行います。
腹を立てたマフィアのボスはロンの恋人であるケイケイ(琦琦)を人質にしてロンを痛めつけます。
ロンは果敢に構成員たちと戦いますが、ケイケイが刃物で刺されます。

 

ロンは病院へ駆け込みますが彼女の手術費用を工面することができず、ギャンブルでお金を捻出しようと考えます。
思惑通り手術費用を賄うことができたロンですが負かした相手の男(徐承義)に恨まれ、小競り合いの末に男を死なせてしまったロンは殺人容疑で逮捕されます。

 

命を落とした男は若頭ゴンチュー(劉德華)の弟で、弟を失ったゴンチューはロンを逆恨みします。
受刑者のアニキとラム(高捷)はゴンチューの組織に属しており、収監されたロンの命を狙います。
刃物で襲われたロンは抵抗し、所長(柯俊雄)が現れるとラム一派は凶器の刃物を隠して白を切ります。
チューは証拠の刃物を拾って所長に提出すると、ラム一派は処分を受けます。

 

独房から出てきたクワイ(王羽)はワイを潜入捜査官だと疑いますが、ワイは悟られないように必死に取り繕います。
こうして徐々にクワイのワイに対する不信感は消えていき、信頼関係が生まれます。

 

ロンが医務室から戻り、クワイはロンとラム一派の仲介をして双方は和解します。
しかしラム一派は腹の中ではロンを許してはおらず、ロンを庇ったチューも標的にされます。
ラム一派はチューが飼っていた大事なハムスターを殺し、激高したチューはラムと争いになります。
ラム一派の非道な仕打ちに腹を立てたワイはラムを痛めつけると、トウ刑務官(杜福平)に制止されたワイは独房に送られます。

 

サイギは再び逃亡を企て、クワイと一緒に脱走します。
しかし逃げ切ることはできず、サイギは居場所を教える代わりにクワイの罪を軽くしてほしいとトウ刑務官と交渉していましたがトウ刑務官は約束を破ってクワイを銃殺し、サイギは刑務所に連れ戻されます。

 

三度サイギは脱獄しますが、警察車両に乗ったサイギは誤って刑務官を轢いてしまいます。
度重なる逃亡の罪と刑務官を死なせた罪でサイギは死刑が確定し、刑が執行されます。

 

ゴンチューはロンに復讐をするため、わざと暴行事件を起こして刑務所に収監されます。
ロンとゴンチューの対決が行われ、刃物を用いた死闘はロンが制します。
刑務官たちはゴンチューを殺すように煽ると、刑務官の非情な振る舞いに腹を立てたロンはトウ刑務官に殴りかかります。
ロンを制止しようとしたゴンチューは銃で撃たれます。

 

トウ刑務官はワイを始末するためにラムを利用します。
ラムはトウ刑務官の指示通りに電球が爆発するように仕掛けをしますが、ワイではなくチューが爆発に巻き込まれて死んでしまいます。
トウ刑務官はワイの殺害に失敗したラムに暴行を加えるとワイはトウ刑務官を制止します。
トウ刑務官はワイを射殺しようとしますが、立ち塞がったラムが射殺されます。
ワイはトウ刑務官が落とした銃を拾い、トウ刑務官を射殺します。

 

ワイは刑務官殺しの罪で死刑を宣告され、刑が執行されます。
しかしワイは死んでおらず、目を覚ますと目の前に所長の姿がありました。
所長は死刑囚を利用して悪人を征伐する裏の組織”清風隊”を指揮しているとワイに告げます。
表向きはこの世から存在が消えたワイですが、任務が終われば新しい身分が与えられます。
ワイには任務を断る選択肢は無く、所長の指示通りに動くことになります。

 

処刑されたはずのサイギは生きており、ロン、ゴンチューもワイと同じ任務が与えられます。
任務は麻薬犯罪組織のボスであるサマの暗殺で、四人は指示通りにサマを暗殺し、サイギたちは逃走用の車に乗り込みます。
車に爆弾が仕掛けられていることを悟ったワイはサイギたちに車から離れるように叫びます。
軍隊が出動して銃撃戦が展開し、ミウは軍用機を奪ってワイを救出しますが、三人は軍隊の銃撃によって命を落とします。

 

サマの相棒だった所長は犯罪者との関わりが公になることを恐れ、ワイたちを利用してサマを殺害し、同時に利用したワイたちも消そうと画策していましたがワイは生きており、所長の計画が狂います。
ワイの恩師であるソン警部は所長の悪事を疑っていたため、所長はソン警部を殺したのです。
所長はワイを買収しようとしますが、ワイは応じず所長を逮捕します。

 

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まぁ、評判がアレなので(笑)期待しないで観たのですが、あれれ?意外と面白いじゃん(・∀・)
しかし傑作とは呼び難く、監獄風雲のようなドラマ要素、ミステリー、ハードボイルド、ガンアクションなど色んな要素を詰めこみ過ぎなんですよね(^^;)
なのでテーマが一貫していたらなかなかの傑作になったのではと思ったりします。
でもこの手の作品はいわゆるB級路線のほうが逆に価値があるのかな。

 

ジャッキーが主役のように扱われていますが、本作の実質的な主人公は梁家輝(レオン・カーファイ)です。
ジャッキー映画だと思って観たらドラゴン特攻隊の時と同じくコレジャナイ感は拭えないけど、今回はまだジャッキーの存在意義があるように思えます。
それにしてもジャッキーが演じるキャラクターが不憫すぎる。
まっとうな人間なのに過失致死で刑務所行き、恋人も失い、おまけにスナイパーにさせられて命を落とすって悲惨すぎるよ。

 

本作はミステリー部分について冒頭から致命的な欠陥があります。
現場に残された人の指は刑が執行された死刑囚の物だと分かり、死刑囚が殺人を犯すという不可解な事件を追うというミステリーのはずなのに、ソン警部を殺害して逃走する犯人を描写しちゃ駄目でしょ。
「ソン警部がすでに殺されている」→「現場に人の指が落ちている」→「指を調べると処刑済みの死刑囚の物だと分かる」→「謎を解くために監獄へ潜入する」という流れにしないとミステリーが成立しないよ。

 

ロンが重体のケイケイを救うために駆け込んだ病院って重体の患者を目の前にしていますぐ金が払えない場合は処置しないの?
そんな病院ある!?

 

ロンやゴンチューは逮捕されてからすぐに刑務所のシーンになるので、これだと逮捕後に裁判もしないで即刑務所に収監される印象が強くなってしまいます。
ここはもう少し時間が経っているような演出にできないものかなぁ。

 

サモ演じるサイギは何度も脱獄していましたね。
パトカーを奪って逃走していたけど、車の鍵を刺さったままにしておくなんて杜撰な刑務官だなぁ。

 

演出が唐突なのも気になる。
ワイが刑務所に収監されて気がついたら突然スナイパーにさせられるという唐突な演出。
刑務所内の人間ドラマを観ているうちにすっかりワイの本来の目的を忘れてたわ。
あと途中のエロ要素も唐突(^^;)

 

最後の暗殺任務のシーンで、ジャッキーの着ている服が成家班のTシャツだった!!
赤いJCマークがチラリと見えるんですよね(;'∀')
まさか衣装代ケチった??

 

…とまぁ細かいところを指摘するとキリがないのですが、好きなシーンもあります。

 

ワイとチューの友情など人間ドラマの部分に関してはなかなか良かったです。
チューは一見犯罪なんて犯すように見えないけど一体どんな罪で収監されたんだろうね。

 

ジミーさんの迫力が凄まじい(;'∀')
サモと語り合うシーンで見せる哀愁を帯びたジミーさんの表情も良かったな。
ジミーさん、劇中でもジャッキーの仲介人になってた(^^;)

 

原題の「火燒島」とは台湾の台東県にある「綠島」の別称です。
火燒島と呼ばれていたのは日本統治時代までで、実際に監獄も存在していたそうです。

 

日本版や香港版などでは本編がだいぶカットされていて、台湾版だと完全版が観れるらしいです。
私は台湾版は未見なのですが、完全版だとまた評価が変わるかもしれないですね。